加齢に伴い、徐々に心身機能が低下していきますが、それに対して要介護状態にならないように自立に向かうためには、専門的かつ積極的な介入が必要になります。しかし、特別養護老人ホームに入居する人の多くは、介護度が重度化し、帰宅することができないのが現状です。「Functional Recovery Care(自立支援介護)」とは、「利用者の自立性の回復において、科学的根拠に基づく積極的な支援をすること」です。その中でも、「水分、栄養、排泄、運動」といった「基本ケア」が重要であり、介護福祉士が身体状況を整えた上で、利用者の望みをかなえていく支援が「自立支援介護」なのです。高齢者の体重の約半分は水分からなり、細胞が正常に機能するためには多くの水分を必要とします。高齢者の多くは、脱水症状が原因で体調を崩していますが、十分な水分ケアをすることで、驚くほどの回復傾向がみられます。必要な水分、栄養、運動はどのように提供するのかに着目して、データを取り、結果を出しているのが「自立支援介護」であり、今まさに海外で注目されている取り組みなのです。日本は世界的に見ても最も高齢化が進んだ国ですが、今後アジア諸外国は、より早いスピードで高齢化が進むと考えられます。近年アジア諸国の人たちが来日し、日本の進んだ介護の技術や知識を学び、数年後に自分の国に帰り、来たるべき高齢化に備えています。私たちがこれらの国々の手本となれるように、介護の専門性をより高めて、国内だけではなく世界に貢献できる介護福祉システムを作りあげていってほしいと願っています。

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古川 和稔教授福祉社会デザイン学部 社会福祉学科

  • 専門:介護福祉、理学療法、自立支援、福祉実践の国際比較
  • 掲載内容は、取材当時のものです