私たちの生活や人生では、「重要な他者」との出会いと別れがあり、その別れには痛みが伴います。重要な他者を失ったときに、残された人々が経験する心身の反応を、「悲嘆反応」といい、ごく自然な反応として捉えられています。ペットを重要な他者として生活してきた人にとっては、ペットとの別れは心身に大きな影響を及ぼし、それは人間であった場合と共通しています。日本国内では、4世帯のうちの1世帯がペットを飼育していると言われ、ペットを重要な家族の一員であるとみなす傾向にあります。私たちの社会では、重要な他者が人間である場合には、残された人々への専門的な支援や研究は進んでいますが、それがペットの場合は、必ずしも十分であるとは言えません。「ソーシャルワーク」とは、自力で解決できない生活、困難を抱えている人々を、専門的な技術・知識・価値を用いて側面的に支援する方法です。ソーシャルワーカーなどの対人援助者は、「ペット・ロス」による悲嘆を経験している人に対して、ペットを重要な家族の一員として捉えている人がいることを理解し、ペットが飼い主の生活にとってどれほど重要な存在であったかを受容することが大切です。このような聴く側の態度が、飼い主のペット・ロスに関する事実や感情を整理し、喪のプロセスの遂行を促すかもしれません。人間の幸福を支えるソーシャルワーカーであるからこそ、ペットが飼い主に与える影響についての知識を持ち、飼い主がどのような困難を抱え、どのような支援を必要としているのかを査定し、サービス提供をしていく時代が来ているのではないでしょうか。

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佐藤 亜樹准教授福祉社会デザイン学部 社会福祉学科

  • 専門:ソーシャルワーク援助技術・方法論、人間の幸福とペット
  • 掲載内容は、取材当時のものです