手近なところにあって、24時間営業しており、商品の選択の幅は少ないとはいえ、だいたいのものが買えるコンビニエンスストアは、「便利」を売っているとも言えます。どのようなマーケティング戦略なのでしょうか。例えば雑誌売り場には、どの店舗でもほとんど同じ商品が並んでいます。こうした商品を「ナショナルブランド商品」といい、メーカーが商品企画を行っています。一方で、カップ麺や飲み物売り場には最近、コンビニが商品企画を行っているオリジナルの商品が増えてきました。スイーツやお弁当売り場に並ぶ商品は、ほとんどが「オリジナル商品」です。なぜなのでしょうか。まず、ナショナルブランド商品を買う場合、払う金額も商品も同じなら、みなさんは近い店舗に行くでしょう。しかし、オリジナル商品を買う場合、同じ距離に異なるコンビニが2店舗あったら、自分の好きな商品が置いてある店舗に行くのではないでしょうか。または、少しくらい遠くても、好きな商品がある店舗へ行くでしょう。つまり、距離ではなく、商品の魅力が店舗の選択を決めているのです。オリジナル商品の開発は、これからのコンビニ経営の鍵となります。距離による便利さではない要素で競争する必要性があるのです。言い方を変えれば、オリジナルを追求することで、顧客に長時間の移動という不便を提供することによって、現在のコンビニ経営は成り立っているともいえるのではないでしょうか。マーケティングの本質は、一般に人がどのように選択し、なぜその店に行き、なぜその商品を選ぶのかを研究することです。それを解明することが、マーケティングの魅力なのです。

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長島 広太教授経営学部 マーケティング学科

  • 専門:マーケティング論
  • 掲載内容は、取材当時のものです