東洋大学では産学連携プロジェクトとして、競技用国産カヌーの開発に取り組んでいます。さまざまな企業のバックアップのもと、大学が中心となって今まで研究で培った「知」と産業界の「技術」を融合させ、世界一早いカヌーの開発を目指しています。現在、急流の川を進んでいき、18~25の関門を回りながら250~400メートルのコースの順位を競い合う「カヌースラローム」という競技用カヌーを開発しています。競技では関門を回り、いち早く流れに戻るために加速性能、直進性能、旋回性能の3つが高い次元で求められます。加速性能や直進性能を上げるためには飛行機や風力発電等で使われる流体力学を応用し、旋回性能を上げるためには、例えば船尾をカモノハシのくちばしのように薄くするなど、バイオミメティクス(生物の良さを模倣)を生かした新しい形を取り入れています。また、以前は職人の手作りだったカヌー作りを、今回は産業界の高い技術を活用してレーシングカー等と同じ材料、工程を経て作り、コンピュータでシミュレーションする試みをしています。2018年10月には試験艇「水走(MITSUHA)」を発表し、実際に選手に試乗してもらいました。そこでの問題点を洗い出し、より高い性能になるよう研究に取り組んでいます。このように船を開発することは、日本のものづくりの技術の高さを世界に発信すると同時に、日本の技術で海や川と共生する方法を創出し、海を知り、共に生きるためのイノベーションを図ることにつながるでしょう。

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窪田 佳寛准教授理工学部 機械工学科 バイオメカニクス研究室

  • 専門:バイオミメティクス、流体力学、可視化、ICT
  • 掲載内容は、取材当時のものです