最近のスポーツ界では、「スポーツマンシップ」や「フェアプレイ」などの倫理観が問われる場面が増えてきています。しかし、実際にスポーツマンシップが何かと問われると、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。スポーツマンシップとは「正々堂々と公明に勝負を争うスポーツマンにふさわしい態度、備えているべき精神」などと解釈されます。そもそもスポーツマンシップの基礎が誕生したのは、多くの近代スポーツが生み出されたイギリスです。当初「スポーツ」とは、ジェントルマン(紳士)が、狩猟をはじめとする活動のことを指していました。そして、紳士の子息が通うパブリックスクールでは、将来の英国紳士を育てるために、スポーツを通じた人間教育が行われており、その中で、彼らの祖先であり根本である騎士道の精神と相まって、スポーツの倫理的・道徳的側面が強調されるようになりました。このようにして生まれた考え方がスポーツマンシップです。日本には明治時代に、日本の部活動や運動会の礎を築いた英語教師ウィリアム・ストレンジによりスポーツマンシップが伝わり、その教え子であり各地で県知事を務めた武田千代三郎が、日本の武士道と関連付けて「競技道」という呼び名で普及させようとしました。その後、2000年代に広瀬一郎が新たに提示したスポーツマンシップの定義は、時代に左右されない普遍性を持って、今に受け継がれてきたと考えられています。スポーツを通じて、世の中に広がる多様な価値観を学び、深く「哲学」する姿勢を持ってほしいものです。
谷釜 尋徳教授法学部 法律学科
- 専門:スポーツ史
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