私たちは、銀行に預貯金があると、「おかねがある」と認識します。おかねには、モノの価値を測る「価値尺度」機能をはじめ、モノと交換できる「交換手段」としての機能、価値を貯めておいて後でモノと交換できる「価値貯蔵」機能、そして、借金契約や利息の契約の基準である「繰り延べ支払いの標準」としての機能があります。これらの機能には長い期間価値を安定させることが重要であり、金融取引も価値の安定を前提に行われています。また、金融によって企業が生産設備を持ち、人々の勤め先が生まれ、豊かな生活の基盤となります。価値の安定のためには発行元の信頼性や、日本銀行がおかねの発行量を制限するなどの希少性が重要です。ところが仮想通貨は、所有者や取引が匿名で、価値も不安定なため、価値尺度や交換手段、価値貯蔵には向いていません。また、新規の発行がいくらでもできるため、希少性がなくなり、価値がなくなるなど、おかねの機能を持っているとは言えないのです。仮想通貨にうっかり多額のおかねをつぎ込んだ人や、大儲けを企んでいる人がその価値を保とうと、インターネットや本で、まるで良いもののように書いていますが、実際にニーズが合う人は、相続税対策に利用する先進国のお金持ちや海外送金のために利用する途上国のお金持ちなどです。私たちが仮想通貨を保有して買い支えることは、彼らを支援するようなものです。おかねをきちんと学べば、何が儲かるかはわからなくても、何が損をするのかはよくわかるようになります。しっかりと理解したうえで、それでも仮想通貨で勝負、ということであればどうぞやってみてください。

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宮村 健一郎教授経営学部 会計ファイナンス学科

  • 専門:eファイナンス、金融マーケティング
  • 掲載内容は、取材当時のものです