介護現場では、人が人を抱える介護が多く行われていますが、腰痛の原因になるだけではなく、立てない人を無理に引っ張り上げることで一緒に倒れてしまうリスクもあります。簡単な道具「スライディングボード」の使い方を学び、今の介護を変えていきましょう。道具は簡単なものですが、立たずに体重を横移動させる方法で、練習やコツが必要です。移乗方法は“座位移乗”で、安定した座位がとれ、前傾姿勢になれる人に適していますが、皮膚のずれや摩擦にリスクのある人、腹水がたまった人には不適です。ベッドは高さ調節できるハイロ―機能付き、車いすはアームレストやフットレストが外せるものが必要です。まず、利用者さんにスライディングボードによる座位移乗を行うことを説明し、ベッドの高さを調節、車いすの準備をします。ボードを敷くときは、移乗する車いすと反対側の斜め前に、前、斜め、と動かして体を倒すことにより片方のお尻が浮くので、そこにボードを入れます。車いすをできるだけ近づけ、ブレーキを確認し、ボードを回転させ、車いす座面に10センチ以上ボードがかかっていることを確認したら、ゆっくりとボードの上をすべらせ、座位を整えます。実際に体験し、道具の使い方をマスターし、道具の組み合わせでその人の力を引き出すこともできます。これらを学び、新しい介護の技術を広めていきましょう。

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渡辺 裕美教授福祉社会デザイン学部 社会福祉学科

  • 専門:介護福祉学、24時間ホームケア、利用者中心の介護
  • 掲載内容は、取材当時のものです