生活困窮者自立支援法の定義する生活困窮者とは、「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなる恐れのある者」とされています。生活困窮の要因には、失業や非正規雇用、病気や障害、離婚やDVなどのほかに、親の貧困で十分な教育が受けられないなど、さまざまなものが挙げられます。路上生活者の場合は主に、仕事の喪失が要因であり、誰もがその可能性を持っていると言えます。戦後に減った、生活保護受給者数・保護率も、ここ数年は戦後すぐと同じ数に増えています。年収200万円以下の給与所得者が、平成12年の26.0%から平成24年には35.2%と増加しているのです。経済的問題だけではありません。一人暮らしの高齢者の孤独死や、ニート、引きこもりは増えるばかりです。社会的排除や孤立という概念を含む、複合的問題を抱える生活困窮者への社会のまなざしが、批判的で、過剰な自己責任論が問われているように思いませんか。こうした中、私たちがめざすのは、「ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)」です。誰もが排除されず、お互いに支え合い、みんなで共生社会をつくっていこうという考え方です。私たち一人ひとりが、「自分には何ができるのか」を考えましょう。孤立している人のための居場所づくりなど、私たちにできること、ソーシャルインクルージョンを、みなさんにも考えてもらいたいものです。

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山本 美香教授福祉社会デザイン学部 社会福祉学科

  • 専門:地域福祉論・住宅政策
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