優れた企業には、優れた人材、お金、情報といった「良い経営資源」と「良い戦略」、そしてチームワークの「良い組織」が必要ですが、それらを実行する「良いオペレーション」がなければ、良い企業とは言えません。良いオペレーションとは、製品をつくる際の、原材料からお客さんに至るまでの一連の流れをスムーズに流していくことを指します。このような考え方を、ものづくりの現場で導入することができれば、品質管理の行き届いた良いものを、安価で計画通りに提供することができます。本講義では、こうした「良い流れづくり」を「ものづくりの経営学」と捉えます。良い流れづくりは、ひと、もの、機械といったインプットを、製品、サービスといったアウトプットに変換する「プロセスの見える化」からはじめます。次に、「ものの流し方」を考えます。ものの流し方は、大きく”プッシュ型”と”プル型”の2つに分かれます。プッシュ型は、「需要予測に基づいて前工程で計画通りに生産した部品を後工程に供給する方式」のことで、その代表例がTOC(制約条件の理論)です。TOCでは、各工程の生産能力のバラつきが大きい場合、一番生産能力の低いボトルネックに生産システム全体の流れを合わせなくてはならないため、全体の生産能力が下がってしまうという問題があります。このような場合、ボトルネックを改善するなどして生産能力向上を図る必要があります。一方プル型は、受注状況に応じて、「必要な物を、必要な時に、必要なだけ生産する」という考え方で、その代表例がJIT(ジャストインタイム)です。JITでは、後工程で必要な部品がなくなりそうになったら、前工程から部品を供給するので、ムダがなく、よりレベルの高いものづくりが可能です。以上の良い流れづくりの考え方は、サービス業にも応用可能で、レストランやホテル、病院などのオペレーションの分析にも使える、非常に汎用性の高い考え方です。

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富田 純一教授経営学部 経営学科

  • 専門:技術経営、技術・オペレーション管理
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