近年、銀行貯金より株式投資のほうが儲かると言われ、日本企業の配当総額も増加傾向にありますが、それがなぜなのかを、経営学の理論から考えましょう。
配当とは、株主の持ち株数に応じて、企業が獲得した利益の中から支払われるお金のことです。配当に関する理論には、株主の利益を最大化させる「最適配当政策」が存在し、代表的なものの一つに、配当した方がよいとする、「フリーキャッシュフロー理論」があります。多くの株式会社では、企業の経営者と、資金を提供する株主の利益は必ずしも一致しないため、経営者の都合で無駄遣いされないよう、余剰資金は株主に配当するのが望ましいという考え方で、主に、お金に余裕のある成熟企業で成り立つ理論です。一方、配当をしない方がよいとする、「ペッキングオーダー理論」は、お金が足りない成長企業で成り立ちます。機密情報など、経営者しか知らない情報によって増資を行おうとしても、株主がそれに賛成せず、資金不足から儲かる投資を逃してしまうなど、うまくいきません。それならば配当はせず、儲かる投資案件が出てくる時までお金をためておくことが最適だとする理論です。
企業によって、最適配当政策は異なりますが、近年の日本は、経済の成熟、少子高齢化などで、儲かる投資が減少し、余剰資金があるため、配当することが望ましい傾向にあります。そうしたことから、日本企業全体の配当が増えたのだといえるでしょう。

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佐々木 寿記准教授経営学部 経営学科

  • 専門:コーポレートファイナンス
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