紀元前12~13世紀にアーリア人が北西インドに定着、バラモン教が生まれました。その宗教観念は「自然現象」に対する崇拝でしたが、時間が経つにつれ信仰が抽象化し、「哲学的な思想」が深まっていきました。ブッダが誕生する頃には「輪廻思想」が形成されますが、苦しみがあふれているこの世に再び生まれるという死と生の循環から逃れるために、解脱や救済の思想も発展していきました。
西洋哲学は中世以降、キリスト教神学から離れて独立しますが、インド哲学は宗教と一体化しており、最終的には悟りを開く、いわゆる「解脱」を目指すことが最大の特徴です。悟りを得るためには、自我と世界の関係を正しく理解する必要があります。そこで、哲学者たちは自我(アートマン)がどこにあるかを探したり、世界の存在をとらえるために何らかの手がかりを模索したりと、「自我と世界の関係」を追究してきました。
インド哲学にも西洋哲学同様、論理学の体系が古代からあります。したがって、ギリシャ以来の西洋哲学の伝統と並び、インド哲学は人類の知的遺産といえるでしょう。

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沼田 一郎教授文学部 東洋思想文化学科

  • 専門:古代インドの法と社会

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