現在、街中にある歩道と車道の間にある段差を乗り越えることができる車椅子用キャスターの開発に取り組んでいます。歩道と車道の段差は、調べてみると20mmから40mmが多いことがわかります。段差が20mmの場合は、既存のキャスターで乗り越えることは可能ですが、40mmになると乗り越えることが難しくなります。本研究における独創性とは、モーターやセンサーなどのロボット工学の技術を一切使わず、メカニズムの工夫だけで、段差の乗り越えを実現させる点にあります。

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現時点では、機械工学のリンク機構を応用し、車輪が段差に当たった時に働く「前後方向の力」を「上下方向の力」に変換して段差を乗り越えるメカニズムを実現しました。それをもとに車椅子用キャスターの試作を完成させ、機構設計の有効性を確認しています。さらに、本キャスターの限界領域である40mm〜50mm程度の段差高に直面しても、止まらずに走り続けたまま乗り越えられるように、リンクの長さやリンクの穴の位置などについても検討・改良を進めています。

今後は、企業との共同開発を実現させて、今持っている技術を手動車椅子や電動車椅子などの移動支援に活かしていきたいと考えています。大学の使命は、今ある社会の問題を解決し、社会に貢献していくことです。メカニズムの側面から移動支援に挑む本研究を通して、誰もが自分の意思で行動できるユニバーサルな社会の実現を目指します。

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横田 祥教授理工学部 機械工学科 ヒューマンロボットインタラクション研究室

  • 専門:ロボティクス、人間活動支援システム、インタフェース
  • 掲載内容は、取材当時のものです