医療現場で用いられるCTやMRIなどの装置を「医用機械」と呼びます。人の命を救うためには、医療従事者と工学系技術者の協力が必要不可欠です。医師は、手術、診断、治療、リハビリテーションなどで用いる医用機械やシステムを活用することで、早期診断や効果的な治療を実現することができます。
医用機械工学研究室では、機械工学や電磁気学などの知識を応用して、新しい加温治療システムを開発しています。この加温治療システムは当初、がんの温熱治療を目的として開発を進めてきました。現在はさらに技術を応用し、さまざまな大学や医療分野の専門家と共に、高齢者に多く発症する変形性関節症を対象とした「温熱リハビリテーション」の研究を行っています。

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加温治療システムには、家庭で使われる電子レンジと同じ原理が用いられています。しかし、電子レンジのように電磁波で全体を温めるのではなく、共振現象という特殊な現象を使って、狙ったポイントだけを集中的に加熱します。通常、臨床で用いられている加熱装置は、表層面しか加熱することができません。それに対して、人体の深部を集中的に加温できるシステムは、当研究室で開発している装置だけです。この温熱リハビリテーションシステムは、国内外の学会発表でも高い評価を得ています。
医用機械の研究には、熱力学、伝熱工学、シミュレーション工学、制御工学、ロボット工学などの機械工学系の知識の他に、電磁気学、画像処理、情報工学など、幅広い分野の知識が必要となります。医用機械工学研究室の使命は、理工学の力を最大限に活かして、多くの人に役立つ医用機械の開発に挑み続けることなのです。

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新藤 康弘准教授理工学部 機械工学科 医用機械工学研究室

  • 専門:医用工学、リハビリテーション工学、バイオメカニクス、有限要素法解析、超音波工学
  • 掲載内容は、取材当時のものです