「電気微生物」とは、細胞の外にある固体(金属や電極)と電子をやり取りすることでエネルギーを獲得する微生物の総称です。これらの微生物はデンキウナギのように強力な電気ショックを発するのではなく、細胞内外をつなぐ微細な電子の流れを代謝に利用して生育しています。本来、細胞膜は電気を通しませんが、電気微生物は「細胞外電子伝達経路」という独自の回路を備えることで、この制約を克服しています。
例えば、代表的な種であるシュワネラは、細胞膜(内膜と外膜)に配置された複数のシトクロム内のヘム(鉄錯体)を介して電子を伝えます。また、細胞外に「導電性ナノワイヤー」と呼ばれる構造体を伸ばし、離れた場所にある電極へ電子を伝えるものも存在します。
電気微生物は、電子が流れる向きによって2つに大別されます。有機物を分解して電極へ電子を放出する「発電菌」と、電極から電子を受け取ってCO2を還元する「電気合成菌」です。いずれの微生物も、電極との電子のやり取りに基づいて「呼吸」を行うことで、生育に必要なエネルギーを獲得しています。
電気微生物を応用し、廃水などに含まれる有機物から発電する「微生物燃料電池」や、電気とCO2から有用物質を生産する「微生物電気合成」といった革新的な技術の研究が進んでいます。電極と微生物の相互作用を理解することで、持続可能なエネルギー生産と物質変換の新たな可能性が拓かれると期待されます。