エアラインでは、安全運航のために組織内コミュニケーションの在り方が重視されています。過去の航空事故を振り返ると、操縦技術や機体性能に問題がなくても、思い込みや見落とし、状況認識のずれ、情報共有の失敗といった人的要因が重なり、重大な結果につながった事例が見られます。人は間違える存在であるという前提に立ち、安全を支えるコミュニケーションを構築することが不可欠です。
操縦室は限られた人数で構成される閉ざされた空間です。機長と副操縦士の間には経験や立場の差による権威勾配が生じやすい構造があります。下位職が異変に気づいても声を上げられない状況は安全上のリスクとなります。
こうした事態を防ぐには、相手を尊重しながら率直に意見を伝える姿勢が不可欠です。しかし、このような自己表現(アサーション)は、職場特有の上下関係や遠慮などによって阻まれやすく、個人の努力だけでは限界があります。
そこで導入されているのが、Crew Resource Management(CRM)です。航空会社において安全文化を醸成するための教育ベースのマネジメントとして位置づけられ、すべてのクルーを安全確保のための重要なリソースと捉えます。気づきを共有し、互いに補い合う仕組みは、操縦室から航空会社の他の部署へ、さらに医療や鉄道など他分野にも広がり、主体的な発言を促す組織文化として、人々の働きがいの向上にもつながっています。