観光産業においてリピーターの存在は、観光地や企業の経営を支える重要な要素となります。売上や利益の安定、新規顧客獲得にかかる広告費の削減、新商品や新サービスの利用促進、さらには世代を超えた来訪の広がりなど、リピーターは観光産業側に多くの効果をもたらします。一方、観光客にとっても、過去に良い体験をした場所やサービスは期待とのずれが少なく、失敗のない選択ができるという利点があります。
こうした双方の利点を生み出す仕組みとして、「サービス・プロフィット・チェーン」という考え方に基づいてリピーターが生み出されていきます。従業員に対する働きやすさや働きがいといった内部サービス品質の向上が、従業員満足や定着率、生産性の向上につながり、結果としてサービス品質が高まります。高品質のサービスは顧客満足を高め、顧客ロイヤルティを生み出し、リピーターの増加、売上と収益の向上へとつながっていきます。この好循環を観光の現場で意図的につくっていくことが、将来の観光の発展に欠かせない視点となります。
テーマパークはその代表例で、多様なアトラクションやショー、飲食、物販などが組み合わさった空間の中で、いかに顧客満足を高め、再訪につなげるかが常に工夫されています。従業員のモチベーションやスキルを高める取り組み、接客などのサービス品質の測定と改善、顧客満足度の可視化と向上といった実践が、連鎖的にリピーターの創出へと結び付いていきます。新規顧客の獲得と同時に、来訪者の体験価値を高め、再訪意欲を育てていくことが、これからの観光の方向性を考えるうえで極めて重要になります。