日本は世界有数の長寿国家となりましたが、健康寿命と平均寿命の間には大きな差があり、男性で約9年、女性で約12年も「健康でない期間」が続く現状があります。これは高齢者のQOL低下に直結し、介護給付金の増大にも影響を与えています。さらに一度要介護認定を受け、その後介護度が上がっていくと必要な介護サービスの量が増え、介護給付金がますます増加していくことになります。
この課題を解決するためには、健康寿命を延伸して介護状態を予防するだけではなく、一度介護状態になった後もその悪化を予防していくことが重要です。介護予防や重度化予防を進める中で大切な要素は、栄養、運動・身体活動、社会参加の3つが挙げられます。この中の一つ、「身体活動」は、健康を維持していくためには必要不可欠です。
最近では、ウェアラブルデバイスの開発により、対象者が日頃どれくらい体を動かしているかを客観的かつ手軽に測定できるようになり、さまざまな研究が進められています。なかでも、ウェアラブルデバイスを使って身体活動量とその後の要介護状態の発生との関係を調査した研究では、屋内で家事動作のような細かな動きを1日10分程度行うことで要介護認定リスクを防ぐ健康効果があることがわかっています。
こうした研究エビデンスを踏まえ、ウェアラブルデバイスから得た身体活動量のデータをプログラミングで可視化し、個人の特性やライフスタイルに合わせた目標設定作りや健康指導に役立てています。例えば高齢者の介護予防教室でグループワークを行い、フィードバックをしながらその人にとって最適な提案とは何かを検証し、健康寿命の延伸や介護予防につなげています。