免疫とは、ウイルスや細菌の感染、あるいはがん細胞から私たちの体を守る生体の防御システムです。この免疫システムは、私たちが健康を維持するために重要な役割を果たしています。例えば先天性免疫不全の患者さんは、生後数か月以内にカンジタ皮膚炎、肺炎、敗血症などの感染症を発症し、造血幹細胞移植をしなければ生後1年以内に死亡する可能性があります。

私たちの生命維持には、病原体の感染に対する宿主免疫応答が必須と考えられます。免疫応答とは、顆粒球、単球、リンパ球に属する免疫細胞が協力して皮膚や粘膜を通過して侵入してきた病原体やウイルス感染細胞、がん細胞を攻撃し、生体内から排除する反応のことです。免疫応答のしくみは、「一次応答」と「二次応答」の二段構えになって私たちの体を守っています。一方、免疫システムの過剰な活性化や免疫機能の低下によってさまざまな疾患を引き起こすことから、免疫応答は厳密に制御されています。

これらの免疫応答が、何らかの理由で適切に制御されずに過剰に反応したり過度に抑制されたりすると、アレルギー疾患や自己免疫疾患、感染症やがんの発生、再発・転移などが起きます。したがって症状に応じた免疫系の適切な制御は、健康維持において極めて大切なことです。

また、免疫力は、生活習慣や加齢によって低下していくことがわかっています。免疫力の強さは人それぞれ異なるため、感染症にかかっても、過剰な免疫反応が生じて症状が重篤化する人もいれば、炎症や免疫応答が起こらず無症状の人もいます。さらにウイルス感染症予防のためのワクチン投与においても、副作用を発生する人、効果が認められる人、認められない人など反応はさまざまです。安心・安全かつ効果の高い医療の実現には、ヒト免疫体質の解析・評価システムの開発・確立が重要な鍵を握っています。

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北村 秀光教授生命科学部 生体医工学科

  • 専門:免疫学、腫瘍免疫学、細胞生物学、生化学
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