私たちが普段、生活の中で感じている「音」についての理解を深めるために、デシベル(dB)・耳の構造・ラウドネスに関する知識を得る必要があります。
まず、デシベルとは、ある特定の基準に対しての大きさ(相対値)を表す単位のことで、騒音をはじめとする音の大きさ(音圧)を表します。例えば日常会話の声は60dB程度、ささやき声は30dB程度の音といわれています。身の回りの音や振動の強さ(大きさ)の幅はとても広いため、dBを用いてレベル表現することでデータを扱いやすくなります。
次に、音を聴き取る器官・耳の構造についてです。耳は、大きく「外耳」「中耳」「内耳」の3つの部分に分けられます。音は、外耳から中耳まで空気の振動として伝わり、内耳にある聴覚をつかさどる感覚器官・蝸牛(かぎゅう)へ入ります。蝸牛には音を感受するための装置であるコルチ器官があり、その中にある有毛細胞によって振動が電気信号に変換されます。音は振動が電気信号に変換されることで脳に伝わり、脳が音として処理することで聴こえるしくみになっています。
耳に聴こえる音の大きさは周波数によって変わり、人が耳で感じる音の大きさのことをラウドネスといいます。「等ラウドネスレベル曲線」とは、聴覚の基本的な周波数感度特性を示すグラフのことで、警告のブザーオンを聴き取りやすい周波数で鳴らしたり、耳の特性に合わせて補聴器を設計したりする際に活用されます。
「音」を扱うためには、物理学的な特性を理解するだけではなく、私たちが実際にどのように音を感じ取っているかを十分に考える必要があります。その視点を大切にすることで、医療機器や公共の場で必要な音声案内などのインフラ整備に役立てることができます。
鈴木 裕教授生命科学部 生体医工学科
- 専門:生体信号、信号処理、音響信号処理、感性工学
- ※掲載内容は、取材当時のものです