私たちの生体は、風邪をひくと体温を上げて免疫細胞を活性化させ、体外から侵入してきた病原菌やウイルスとたたかったり、けがをしてもしばらくたつと血が止まり、組織を修復するシステムが備わっていたりと、非常に精緻(せいち)につくられています。この「生体」に工学的につくられた「人工物」が接触すると、さまざまなスケールで「境界面」が発生します。医工学技術の分野において、主に「生体」と「人工物」の境目のことを「バイオインターフェース」といいます。

近年、さまざまな技術の進展に伴って、生体と人工物が接触する機会が増えています。具体的な接触場面の例としては、ウェアラブルセンサーのようにセンサーを身にまとって体の情報を計測する、ナノマシンのように薬をナノメーターサイズのカプセルの中に入れて薬を幹部に届けるなどが挙げられます。この生体(生体膜・タンパク質・細胞)と人工物の境目では、さまざまな反応が起こります。そのため人工物が害悪となり、生体にとって望ましくない生体反応を起こさないように分子レベルで制御し、デザイン設計する必要があります。それができれば、例えば医療材料であるバイオマテリアルや体内物質の濃度を計るバイオセンシングがつくれるようになります。このようにサイエンスとエンジニアリングの両方にまたがる学問領域が、バイオインターフェースといえます。

しかし、現実には生体と人工物の境目を制御することは非常に難しいことです。そこでこの研究には、長い進化の歴史を通して獲得された生物の優れた構造や機能をお手本にして工学に生かす「バイオミメティクス」が有効です。この技術の概念を人工物に活用することで、生体と人工物をスムーズにつなぐことができるのです。

pf-gouda.jpg

合田 達郎教授生命科学部 生体医工学科

  • 専門:バイオインターフェース、バイオミメティクス、バイオエレクトロニクス
  • 掲載内容は、取材当時のものです