病気の子どもたちを理解し、支援していくためには、必要以上の制限をしないこと、教職員間の情報共有、子どもたち一人ひとりに対する正しい病態の知識と個別的な配慮が求められます。そのなかで特に注意が必要なことは、パッと見ただけでは「わかりにくい病気や障害」を抱えている子どもへの理解と対応です。

具体的には、内部疾患であるてんかんや糖尿病などがあげられます。例えば、てんかんは脳の病気であり、その要因は多様で、発作の種類もさまざまです。なかには、本人でも気づかないような「欠神発作」といわれるものがあります。欠神発作とは、けいれんを起こしたり倒れたりすることはなく、動作中に数十秒間、意識がなくなる発作です。この発作は、一般的に数十秒たつと発作が治まり、普段の様子に戻るため、周囲の人も本人も気づきにくいという特徴があります。そのため、教員が子どもたちに絵本の読み聞かせをしたり、授業をしたりしている時などに欠神発作を起こした場合、その子どもは自分では気づかないうちに一部の内容を聞き逃し、情報が抜け落ちてしまうという状況に陥ります。その結果、周囲の人や友達との会話がかみ合わなくなり、子ども同士のけんかやトラブルに発展することがあります。

特別支援教育の現場では、病気や障害の特性をしっかりと理解した上で、常にトラブルの背景にはどのような原因や可能性があるのかを考えながら、けんかの仲裁をしたり、子どもの話を聞いたりする必要があります。また、体調不良を引き起こす要因や二次的に生じる問題を回避するためにも、子どもたちの様子をしっかり、丁寧に観察しながら、表面的な出来事にとらわれず、子ども一人ひとりと向き合うことが大切です。

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大江 啓賢准教授文学部 教育学科

  • 専門:特別支援教育(病弱教育・重複障害教育)
  • 掲載内容は、取材当時のものです