大学に進学することで、どのようなベネフィットがあり、将来どれだけ収入を高めることができるかについて経済学を使って考えます。

例えば、東洋大学に進学するためには、4年間で約400万円の学費を支払う必要があります。もし高校を卒業して18歳から働き始めた場合、4年間の年収の合計はおよそ1060万円になります。つまり「1060万円を得られた」という機会を捨てて大学に進学するわけです。しかし将来的に見ると、大学卒の人は、高校卒の人よりも高い収入を得ることができます。厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(男女計・標準労働者・所定内給与と年間賞与)によると、18歳から64歳までの収入を合計すると、高校卒で2億3500万円、大学卒では2億8600万円というデータが出ています。そのデータからは、大学卒で就職した人のほうが平均すると5000万円ほど年収が高まっていることがわかります。

なぜ、大学へ進学すると年収が高まるのかという疑問に対し、経済学では3つの仮説を立てて説明することができます。1つ目は、大学に進学することで知識やスキルを身につけて能力を高めることができる(人的資本投資)、2つ目は、就職する際に企業側へ「学歴」によって自分自身の学力や能力を示すことができる(シグナル理論)、3つ目は、大学でさまざまな経験をし、新しい情報を得ることで自分自身も気づいていなかったスキルや能力を発見することができる(適正発見機能)からです。大学進学には、自分自身への「投資」という側面と、“大学で過ごすかけがえのない時間を楽しむ”という「消費」の側面があります。学生のみなさんは、この両方を意識することで、大学へ進学するベネフィットを実感することができるでしょう。

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川上 淳之教授経済学部 経済学科

  • 専門:労働経済学
  • 掲載内容は、取材当時のものです