「ごっこ遊び」は乳幼児期の最も代表的な遊びのひとつです。ごっこ遊びとは、おままごとのように、ある物を別の物に見立てたり、自分以外の他者を演じたりする想像的な遊びです。ごっこ遊びでは、社会的認知と言われる、他者を理解する能力が育ちます。例えば、ごっこ遊びの中で子どもたちは「他者の心を理解する能力」を発達させます。なぜなら、ごっこ遊びの中では演じているキャラクターの気持ちを想像したり,その気持ちを言葉に表したりすることが多いためです。
このように、遊びには子どもの発達を促す機能があります。しかし、子どもを遊ばせているだけではなく、幼児期のうちから、文字の読み書きなどの勉強をさせた方が良いのではないか、という考え方もあります。確かに幼児でも、教えられれば、ある程度までは文字の読み書きができるようになります。実際、ある研究では、学習中心の幼児教育を受けた子どもたちは、遊び中心の教育を受けた子どもたちより、文字の読み書きに優れていました。しかし、遊び中心の幼児教育を受けた子どもたちは、チャレンジすることを好むことが示されました。みなさんは、文字の読み書きなどの学習に関連する能力と、他者の心を理解する能力や、チャレンジ精神のような基礎的な資質や能力のどちらがより重要であると考えますか。
子どもの遊びを大切にすることは、子どもの権利や立場を大切にすることにもつながります。みなさんには、「幼い子ども達の立場が大切にされる」社会を実現するための、重要な担い手になってほしいと願っています。

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中道 直子教授福祉社会デザイン学部 子ども支援学科

  • 専門:人文・社会、発達心理学、教育心理学
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