現在、非大都市圏から大都市圏への移動人数は、高度成長期に比べると減っています。大都市圏への転入超過も1960年代に比べればわずかとなっています。このような状況の中でも、10代後半は常に高い移動率を維持していますが、移動の理由については変化しています。具体的に、福井県のデータでは、高度成長期最後の年に当たる1971年度高校卒業生の県外移動者は全体の50%で、そのうち約6割が進学、約4割が就職によるものでした。一方、2010年度高校卒業生では、県外移動者は43%で、そのうち約9割以上が進学を理由に移動しています。日本の中でも地域によって数字に差が出ますが、福井県では、高度成長期に比べて1990年代以降は、高校卒業後に進学しなかった人が県外に移動する機会が縮小し、大学などに進学することでのみ、大都市圏への移動を経験していることがわかります。また、2011年に福井市内の公立6高校の卒業生約6,800人を対象に調査書を送りました。そのうち約2,100人が回答した調査結果によると、1990年代以降は、男性では普通科高校卒業生の80%、専門高校卒業生の37%、女性では、普通科高校卒業生の63%、専門高校卒業生の23%が、県外大学へ進学しています。県外進学のために移動する人の割合は、普通科高校か専門高校かによっても異なります。「大学へ行く」または「県外へ出る」という経験をみんなが同じように享受するとは限りません。社会の中で、どの立ち位置にいるかによって経験することが大きく変わってくるのです。人の行動や考え方が、時代背景や環境、社会全体の在り方にどう影響を受けているのか、社会学の視点を通して考えていきましょう。

pf-nishino.jpg

西野 淑美准教授社会学部 社会学科

  • 専門:都市社会学、地域社会学
  • 掲載内容は、取材当時のものです