この講義では「ツーリズムの定義」について考えます。定義には、具体的な数字や条件を使った「専門的な定義」と、感情や動機などで表現される「概念的な定義」があります。国連の世界観光機関(UNWTO)はツーリズムについて、「日常生活圏を離れて旅行したり滞在したりする活動」「1年以内のレジャーを目的とするか、24時間以上のビジネスなどを目的とするもの」と定義づけています。これは「専門的な定義」にあたりますが、期間や目的の設定などに不明瞭な点や違和感があることに気づくでしょう。現在は非常に多くの観光の種類があるので、ここで定義された目的だけでは網羅しきれない状況です。「概念的な定義」については、ツーリズムの研究者・コーエンが、旅行者を4つの概念的なタイプに分類しました。「Organized mass tourist(組織化されたマスツーリスト)」は、ホテルや飛行機代などを含むパッケージツアーを利用し、安全な環境を好みます。例えば、日本人に人気の高いハワイが挙げられます。「Individual mass tourist(個人マスツーリスト)」は、行き慣れた場所を選ぶとともに、自分らしい個性を加えます。「Explorer(探検家)」は、雑誌やインターネットなどで調べて、旅行代理店を使わずに自分の好きな計画を立てます。「Drifter(放浪者)」は、常に新規性を求め、危険で不便な場所にも行きます。ツーリズムの定義はまだ、どちらの定義も完璧とは言えません。観光学の研究分野はまだ新しく、時代によって変化していくため、さまざまな視点でツーリズムの定義を考える必要があるのです。

pf-robson

ロブソン グライアム教授国際観光学部 国際観光学科

  • 専門:言語学、カリキュラム開発、比較文化研究
  • 掲載内容は、取材当時のものです