児童文学にも、文学研究としての手法があります。その基本を学ぶことで、幼い頃に好きだった絵本や、映画で見たことのあるファンタジーを、文学の観点から分析したり解釈したりすることができます。文学のレポートは、英語でEssay(エッセイ)とも言われますが、読書感想文や日本語のエッセイのように、思ったことをつらつらと書いていくのではなく、論理的に一つの観点でまとめたものです。また、文学は人文科学の一つです。科学とは同じことをしたら同じ結果になるものであり、文学についても科学の枠組みとして、ある種のルールに従って読んで分析するとそれなりの結果が出る、といったガイドラインがあります。ここでは児童文学の人気作品、『James and the Giant Peach(おばけ桃が行く)』を題材に、実際に分析し、レポートにまとめます。学生たちは登場人物に注目し、なぜ最初から虫たちはジェームズに好意的だったのか、好きな登場人物と理由、同じ害虫のミミズとムカデの性格を対照的に描いた作者の意図は何か、ジェームズの虫たちへの印象、虫からみたジェームズの印象は、物語を通してどのように変わったのか、なぜ登場人物が虫なのか、といったさまざまな疑問点についてグループで話し合いました。登場人物を分析することで、物語の設定の意図やテーマが見えてきて、さらに分析を深めていくことができます。分析を進めると問いがたくさん出てきますが、特徴的な要素から、問いについて考え、答えていくことで、独自の論考が芽生えてくるでしょう。それをレポートに書くことでオリジナルなエッセイになっていくのです。

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竹内 美紀准教授文学部 国際文化コミュニケーション学科

  • 専門:児童文学、翻訳論
  • 掲載内容は、取材当時のものです