実際に百貨店などの授乳室に行ってみると、非常に使いづらい設計になっていることに気付きます。例えば、離乳食を温める電子レンジのすぐ横におむつ替え台が並んでいるなど、排泄と食事のスペースが混在し、大人では絶対に避けるような状況がこどもの施設では普通に見受けられます。では、使いやすくて居心地のよい授乳環境にするためには、どのようにデザインすればよいのでしょうか。そのためには課題を発見し、調査や分析によって、よりよい環境構築に向けて提案するプロセスが重要です。今回は、授乳に関する「整備実態実測調査」「利用者の行動観察調査」「授乳の歴史に関する文献調査」など10の調査を行い、多角的な視点から検証していきます。例えば「利用者の行動観察調査」では、複数並んだおむつ替え台のうち、隣に荷物を置くスペースがあるかなど、配置やゆとり、高さによって使用率に偏りがあることが分かりました。これは、実際に利用者の行動を観察して初めて見えてくる部分です。「海外事例整備実態調査」では、海外事例から日本の優れた部分、見直したい部分に気付き、自分たちが今取り組んでいるものが世界の中でどういう位置付けにあるかを理解することができます。このように、デザインをする際には自分のテーマに集中して深く掘り下げると同時に、時間の流れや空間の広がりを意識して、視野を広げることが大切です。人間環境デザイン学科は、デザインを通して人間の暮らす環境をより豊かにする力を養うことができるという、大きな強みを持っています。その力を共に養いましょう。

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仲 綾子教授福祉社会デザイン学部 人間環境デザイン学科

  • 専門:こども環境、建築計画、建築設計
  • 掲載内容は、取材当時のものです