授業で学んだ、楽譜の読み方や音楽の決まりごとといった理論面や、楽器の奏法などは、実際に子どもと関わるときに生きる技能の1つです。しかし、より大切なのは、子どもの音楽表現に出会った時にそれをしっかり捉え、そこからいろいろな表現を引き出していくことです。0~6歳児の子どもの音楽表現には、ごっこ遊びやおままごとといった、日常の遊びの中から自然と、自発的・即興的に表現されるものと、季節の歌やわらべうたといった、伝承歌や童謡など、文化として学んでいく伝統的・文化的な表現の側面をもつものとがあります。この2つは分断しているのではなく、非常に関連深く、文化的なものが姿を変えて、即興的な表現になることもあります。実際に即興を楽しんでみると、楽器の形や音色、鳴らし方や音量の違うさまざまな楽器を選び、みんなで合わせるために、人の音を聞きながら、始め方や終わり方、重ね方、強弱や速さなどを工夫しています。まずは保育者自身が楽しんで、そこから子どもの興味や関心を引き出すような環境構成を心掛けましょう。そして、子どもが何を感じているのか、心の動きをしっかり捉え、さまざまな気づきを「共感」を持って受け止めること、多角的な視点から子どもの音楽表現を捉えることが大切です。芽生えの瞬間を見逃さず、子どもの自発的・即興的な表現をキャッチして応答的に関わることが、私たちに求められているのではないかと思います。

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山原 麻紀子准教授福祉社会デザイン学部 子ども支援学科

  • 専門:音楽教育学、音楽学
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