日本では今、人口減少や超高齢化社会で経済の活性化が懸念されるなか、インバウンドの増加による外貨獲得が多く見込まれることなど、観光振興に期待が高まっています。また地方では、大きな問題となっている空き家対策を観光振興と結びつけ、古民家を再生し、原風景が残る日本を外国人観光客に体験してもらおうといった、観光客を地方に誘客する取り組みなどもあります。外国の空き家を使った地方への誘客事例を見ると、古代ローマ帝国、フィレンツェなど街自体が世界遺産に登録されている観光立国のイタリアでは、「アルベルゴ・ディフーゾ」という宿泊施設があり、一つの建物を上下移動すればすべてが済む一般的なホテルとは違い、もともとある集落の住宅を活用し、その空間を水平移動して滞在するのが特徴で、地元とのふれあいや地域の生活を楽しむことができます。そこには専門的なホテルサービスがありつつ、歴史的な街の中心で、集落の共有施設を使用するなど、生きているコミュニティの中で本物の生活が体験できるといった魅力があります。それだけではなく、経営の観点からも優れています。既存施設を有効利用するため、巨額な資金や新たな開発が必要ないのです。こうした取り組みを日本で適応する場合、日本の木造住宅はイタリアの石造りの住宅とは違い、劣化が早く管理が難しいことや、法律面、周辺住民の理解など、課題はたくさんあります。積極的に地域に関わって、観光振興やまちづくりについて学んでいきましょう。

pf-furuya.jpg

古屋 秀樹教授国際観光学部 国際観光学科

  • 専門:観光地域振興、旅行者意思決定・構造分析
  • 掲載内容は、取材当時のものです