日本語の「国」を意味する英単語には、人の集団・民族とも訳される“nation”、地理的な意味で用いられる国土や、広大な土地や田舎といった意味のある“country”、政治的な議会・裁判所・軍隊といった国家の統治機構を持ち、主権国家と表現される“state”があります。多くの国家は「一つの民族」から成立しているわけではなく、民族意識の強い地域が国家内に存在することがあります。例えばスペインは17の自治州から成りますが、カタルーニャ州では国家との関係に異議を唱える動きが知られています。ナショナリズムは、必ずしも国と結びついているわけではないのです。
領土内の国民に対しての究極的な権威を持っているのが主権国家ですが、ヒト、カネ、モノ、サービス、アイデアが、国境の枠組みを超えて素早く移動し、世界が統合していくグローバリゼーションの中で、企業が生産コストを下げ、利益の拡大を求めて、給与水準や環境規制の低い地域に生産拠点を移し、税金の安い国で事業を拡大するような動きをコントロールできなくなっています。さらに、国家を単位にした制度、例えば主権者である国民が選挙を通じて政治に参加するというデモクラシーに対しても、現在ではどこまで人々の納得を得られるのかが問われています。現代の重要な意思決定に人々の声が反映されるにはどうしたらよいか、国家とデモクラシーが、グローバリゼーションをどうコントロールすればよいのか、これが国際関係学の大きなチャレンジなのです。

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中島 晶子准教授国際学部 国際地域学科

  • 専門:比較政治学、EU地域研究
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