社会の変革により、デザインに関する考え方も変わってきています。これからのデザインには、どのようなことが求められていくのでしょうか。人間は、動物唯一の「道具を作る」という能力を獲得しました。その道具は次第に高度化していき、手工業から機械による大量生産ができるようになりました。そのような「産業革命」により、使用者と製作者、考案者による分業が発展し、「少品種大量生産」が可能になったのです。そして、考案者は「デザイナー」と呼ばれ、産業革命以降に職業として確立しました。しかし、人々の生活が向上すると、個性や多様性を重んじた「多品種少量生産」の考え方が好まれるようになりました。「デジタルファブリケーション」と呼ばれる製造方法が脚光を浴び、デジタルの指令で、製造過程においても、たくさんのものを少しずつ作ることができるようになったのです。それまでは、色や形といったその「モノ」を考える人がデザイナーと呼ばれていましたが、今ではそれだけではデザインの価値は低いとされます。これからのデザイナーの役割とは、「モノ」のデザインだけではなく、それを使った人がどのような行動をするのかという、「コト」自体もデザインしていく「モノゴト」の本質を考えていくことではないでしょうか。みなさんには、人々が幸せに生きるためのデザインを提案すること、そして、それを社会に還元していく役割を担っているということを念頭に、デザインについての考え方をさらに深めていってもらいたいものです。

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柏樹 良准教授福祉社会デザイン学部 人間環境デザイン学科

  • 専門:プロダクトデザイン、ファニチャーデザイン、プロジェクトマネジメント
  • 掲載内容は、取材当時のものです