比較文学の究極の目的 -事例:南方熊楠(1867~1941)の領域を超えたマルチな比較-

2018年1月10日

比較文学という広い範囲の学問について、領域を超えたマルチな比較研究をした南方熊楠を例にお話します。点から線へ、線から面へ、星が星座に見え、物語ができるように、知識という点をたくさん身につけ、選択し、広がった思考のさまざまな項目一つひとつについて、多角的で深いアプローチをする熊楠の研究は、世界各国の思想や学問領域に及びました。「博覧強記(広く書物を読み、さまざまな知識を持つこと)」と呼ばれた熊楠は、幼い頃から好奇心が強く、書物をたくさん読み、紙に筆写することで追体験をし、自分のものにしていきました。数学や論理学、科学で明らかにされる物の不思議と同じく、心もまた、脳や感覚器官と密接不離で、明かせない不思議ではないが、理の不思議は宇宙を貫いている真理であるため、人知で知ることができるとしています。傾注する仏教もまた人知では計り得ず、謎解きの鍵は萃点(すいてん)であり、そこに仏教の根幹である因果の道理を認識し、その視点で世界の現象を見ようとしていたのではないか、とうかがえます。ほかにも、アメーバ状の粘菌類について傾注していたことが知られていますが、彼はそこに地球環境のミニマム版を見て、身近にある小さな命が生きている環境の複雑なバランスが、人間存在の根本の探求につながると考えていたのかもしれません。身近にあふれる題材に気付き、自分自身の観点を探求し、考え、比較文学の醍醐味を実感してみましょう。

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氏名 (姓名は半角スペース区切り)
有澤 晶子
職名
教授
学部
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学科・専攻
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サムネイル写真
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フリーテキスト (専門、等)

専門:比較文学文化

※掲載内容は、取材当時のものです

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