グローバル化や情報化といった社会変動とICTによって、学校教育にはどのような可能性と課題が見えてくるでしょうか。例えばインドのスラム街の他各地では、壁にただ埋め込まれたコンピュータに子供たちが興味を持ち、何も教えていないのに、自分たちでいつのまにか操作できるようになっていました。この実験結果から、知的好奇心、動機づけ、道具があれば、子供自身の中には、自分で学習する能力が備わっていることがわかりました。
現在、日本は少子化やコミュニティ機能低下による“つながりの弱体化”、貧困や不登校、病気や障害など、諸事情による“教育へのアクセスの格差”といった課題を抱えています。それらに対し、学習の個別化や最適化、時間・場所に依存しない学習環境の拡充などで、等しく学習の機会を保障し、個々の学習者に合った教材やカリキュラムを開発することも可能です。しかし、大学のアンケート調査の結果では、ICT学習を実施した学校で、子供たちの意欲や学習習慣などに高い効果が上がっているにもかかわらず、先生たちは導入に消極的であることがわかりました。先生方の不安や負担を軽減するには、システムの単純化、サポート体制、授業のモデルや指導案が必要です。また、学校は勉強以外でもつながりを作る場所なのだという理解、地域や保護者との連携なども大切です。
2020年に実施される新学習指導要領は、社会とつながる力を高めようと、創造性やコミュニケーション能力の育成を重要視しています。これからさらに広がりを見せるICTを活用した教育の可能性に期待しましょう。

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斎藤 里美教授文学部 教育学科

  • 専門:学校教育社会学
  • 掲載内容は、取材当時のものです