経済学とは、世の中に与えられている仕組み(環境やルール)と、売り買いする個々の主体(消費者や企業)の行動原理によって得られる世の中の結果(帰結)が良いものなのか、良くするにはどうしたらよいかを考える学問です。良い結果を導くためとはいえ、個々の主体の行動原理である消費者の満足度追求や企業の利潤追求を簡単に変えることはできません。そこで、これまで経済学の分野では主に、環境やルールを変えることで、より良い結果を得ようとすることが主流とされていました。「完全競争市場」という環境で、市場の取引を通じて物を売り、得るといったことで合理的で効率性が満たされたよい状態が得られるのではないかとされ、市場経済は正当化されてきたのです。
ところが、実際には”消費者も企業もたくさん存在すること”、”情報が十分にいきわたっていること”といった条件が満たされている市場ばかりではありません。そこで、「不完全競争市場」について分析がなされるようになり、そうした中から、お互いの関係性について考慮する「ゲーム理論」が生まれました。また、今まで前提とされてきた個々の主体の合理性についても、人々は本当にそこまで計算高く行動をしているのかを見直す動きが出てきたことで、「実験経済学」や「行動経済学」が生まれたのです。これらは、時代の変化とともに、少数の経済主体の構造が理論的にある程度分かり、実験や検証時のデータの処理についての技術が進展したことから発展してきた分野です。
私たちが経済学を学ぶのは、世の中をより良くするにはどうしたらよいかを考えるためなのです。

ph-hirase0329.jpg

平瀬 和基教授経済学部 国際経済学科

  • 専門:ゲーム理論、情報の経済学
  • 掲載内容は、取材当時のものです