所得のうち、貯蓄の占める割合が多いタイプを「アリ」、消費の割合が多いタイプを「キリギリス」に例えて、さまざまなアリとキリギリスの比率が存在する場合に、どのような経済が考えられるのかを講義していきます。
裕福かそうでないか、欲しいものがあるかないか、将来と今のどちらに重きをおくか。アリとキリギリスの比率が変化する原因はさまざまですが、そのなかには、政策的な原因があります。例えば、今まで実施されていた、将来を不確実にするような政策がある程度確実性のある形に収まる場合、キリギリスの比率が増えるでしょう。逆に、賃金が硬直的で失業が発生しているような状況の場合はアリの比率が増えるでしょう。これは、政策を変えることによってアリとキリギリスの比率を変えることができる可能性があるということであり、アリとキリギリスの比率が変わるということは、世の中の景気に影響を与える可能性があるということなのです。そして、比率が変わることによって財政政策や金融政策の効果が変わってくると言えるのです。
今までの標準的な経済学では、「すべての消費者が同じ性質を持つ=たった一人の消費者が存在する」と仮定した「代表的個人」を考える場合が多かったのですが、最近では、実際にはさまざまな経済主体が存在するということが重要なファクターなのであると議論されるようになってきているのです。

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松﨑 大介教授経済学部 総合政策学科

  • 専門:財政学、公共経済学、地方財政論
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