文学研究は、18世紀後半のヨーロッパで提唱されました。当時は近代国家が形成され、自国の独自性・優位性を注視するようになった結果、「各国ごとの文学史をもとに文学を研究する」という考え方が広まっていきました。その結果、分類に困る作品が出たり、外国との関係を見落としやすくなったりといった問題点が生まれました。
それに対して出てきた方法論が比較文学です。比較文学は「国や文化圏、原語の違いを越えて文学を研究する(クロス・エリア)」「文学という枠にとらわれずジャンルを越えて研究する(クロス・ジャンル)」「ほかの学問領域との関係性に目を向ける(インターディシプリン)」の3つに分けられます。ですから、日本と日本以外の国の文学作品を2つ以上比べて違いや共通点を指摘することは、比較文学の一部にすぎません。比較文学を理解するためのキーワードは「比較」ではなく、「越境」、「境界」となります。授業では比較文学研究の事例として、『シートン動物記』の作者として知られる“写実的動物物語作家” アーネスト・トンプソン・シートンを取り上げます。

pf_nobuoka

信岡 朝子教授文学部 日本文学文化学科

  • 専門:比較文学文化
  • 掲載内容は、取材当時のものです