砂漠や熱帯雨林、深海といった、地球の平均的環境とは大きく異なる極限環境でも生育できる微生物は、極限環境に耐える独特な酵素を持っています。その酵素はさまざまな産業に使用されています。たとえば、好アルカリ菌のセルラーゼという酵素は、洗剤に入れることで汚れ落ちがよくなり、洗剤の小型化につながりました。
道久先生の研究室では、臨床検査への酵素の応用を研究しています。日本人の死因の1/3は、動脈硬化が原因で起こる血管の病気ですが、その原因の1つであるコレステロール値を図るには、コレステロールオキシダーゼという酵素が使われます。水に溶けにくいコレステロールを溶解するために使われる有機溶媒や界面活性剤に、耐性のあるコレステロールオキシダーゼが望まれています。研究室で有機溶媒耐性の微生物の酵素を調べた結果、これまで報告がなかった新しい酵素を発見しました。
このように、極限環境微生物の酵素を探索すると、新たな有用酵素の発見が期待できます。極限環境微生物の酵素は産業面での応用だけでなく、生命の多様性、生命の限界、生命の起源を探る上でも重要な研究材料になっているのです。

pf_michihisa.jpg

道久 則之教授生命科学部 生物資源学科 応用生体触媒研究室

  • 専門:有機溶媒耐性微生物や有用酵素に関する研究

  • 掲載内容は、取材当時のものです