ライフデザイン学部人間環境デザイン学科は2022年2月、「2021年度卒業制作優秀作品展」を自由学園明日館(東京都豊島区)にて開催しました。4年間の集大成となる卒業制作において、各コースで高い評価を得た優秀作品・研究21点が展示されました。

卒業制作の優秀作品を学外で展示

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人間環境デザイン学科では、「建築」「生活支援機器」「プロダクト」といった生活に関わる、あらゆる環境におけるユニバーサルデザインについて、ものづくりを通じて学んでいます。デザインの知識や技術を身につけるとともに、「すべての人に使いやすい環境」をデザインするため、人の営みを総合的に考える視点を養うことをめざしています。

「卒業制作優秀作品展」は毎年開催されており、学生たちが4年間の学びの集大成として取り組む卒業制作の作品や研究のなかから、「空間デザインコース」「生活環境デザインコース」「プロダクトデザインコース」の3コースでそれぞれ優秀作品として選出された作品や論文を展示するものです。今回は学科全体で約180点のなかから20点の作品や論文が選出されました。

好きなことを追求し、ものづくりに没頭した4年間

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空間デザインコースの桑澤怜奈さんは『融合 芸と黒塀』と題し、自身が生まれ育った東京・八王子中町の花街に焦点を当てました。桑澤さんによれば、この地域は、江戸時代からの歴史が色づく街でありながらも、時代の変化とともに新たな業態の店が生まれ、ライブハウスなども点在し、数多くの有名アーティストが生まれてきた、新旧が共存する街だといいます。そんななか、新型コロナウイルスの影響で閉店する店や今後の経営に不安が残る店が増え、昔ながらの料亭が姿を消し、芸妓の人数が減っていくという街が抱える課題を解決すべく、「芸」による「融合」を提案し、街に残る「黒塀」を基調に、街区計画を考案しました。

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「私は幼い頃から日本舞踊を習い、八王子まつりに参加した経験もあり、この街の活性化に役に立ちたいと、街の実態を調査し、街が抱える課題の解決策の提案に取り組みました。舞台美術に興味があり、将来的には劇場などの舞台美術を手掛けることができたらと考えています」と話す桑澤さん。デザインや美術に興味があったことから人間環境デザイン学科に入学し、学んだ分だけ知識が身につき、自分が考えたことが形になっていく喜びを味わったことで、この4年間、存分に学び切ったと言います。建築士の資格も取得し、インテリアデザインを手掛ける会社への就職も決まりました。

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『RTV 21世紀の家具調テレビ』を制作したのは、プロダクトデザインコースの鳥居怜央さんです。「ものづくりが好きなので、授業以外の時間にも、自分がつくりたいものをつくることができる施設・設備が整っていたことは、自分には最高の環境でした」と大学生活は、ものづくりに没頭してきたと言います。卒業後はインテリアスタイリストとして就職するそうです。

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フラットテレビが当たり前となり、薄さが追い求められている現状に対して、「テレビは薄いほどかっこいいのか?」と鳥居さんは問題提起をしました。テレビを電化製品として単体で見れば、薄いディスプレイには近未来感があり、かっこいい印象です。しかし多くの場合、テレビが置かれるのはさまざまな家具が並ぶリビングであり、その空間に薄い近未来型のテレビは馴染まず調和がとれません。そこで、鳥居さんが提案したのがインテリアにおける21世紀型の家具調テレビです。画面は木製の枠で囲まれ、画面との一体感のあるスタンドを取り付け、背面のケーブル類までも見えないように美しく。鳥居さんの想いがこもった作品が完成しました。

学生自ら「問い」を立てて「答え」を探していく

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卒業研究/制作は、それまでに行われるデザインの演習とは異なり、課題や条件などが一切与えられない、「好きなことを追求できる」取り組みです。学生たちは、「何をテーマに研究するのか」「何を制作するのか」「誰のために?」「解決策は?」「どのように、何を使って制作するのか」などを考え、自ら立てた「問い」について「答え」を探して研究を進めます。一人ひとりが取り組んでいるテーマや内容等をプレゼンする中間発表会を経て、さらに研究を深め、制作を進めていく学生もいれば、なかには、途中でテーマを変更し、短い制作期間となりながらも集中して作品を仕上げていく学生もいます。「締め切り間際になると、寝る間を惜しんで制作に集中し、仕上げていた」と話す学生も多くいました。発表会では、再び一人ひとりが自身の研究や作品についてプレゼンを行い、先生方との質疑応答を終え、評価を受けます。今回展示されたのは、そのなかで優秀作品として選ばれた論文や作品の数々でした。

学生たちがいかにして4年間、ものづくりと向き合い、社会課題について考える視点を養ってきたのかが、展示作品を通じて伝わってくる作品展。人間環境デザイン学科では、これからの社会をデザインしていく人材が育っています。

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川越をモチーフにした和ろうそくを楽しむキャンドルスタンド『kalon』。川越の街を歩くように揺れ動く。
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正三角形のユニットをマインドマップのようにつないで並べた本から思考の広がりが見える本棚『yomu』。
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さまざまな「あい」が生まれる公園『i Garden -料理が繋ぐ、人と場所』。旅行気分を味わう料理教室を設計。
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中野区本町付近のまちのなかに、自然と共存する8つの居心地のよい空間を設計した『まちの居場所』。
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