学生の成長支援や「学び」を重視した「経済同友会インターンシップ」は、日本を代表する有力企業などが、国公私立17大学と国立高等専門学校機構と連携して教育効果の高いインターンシップを展開する教育プログラムです。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、学生が企業を訪問して参加することがかなわず、オンラインで研修を実施することになりました。学内での選考を経て参加した4人の学生たちは、さまざまな気づきを得ながら、自身のキャリア形成へとつなぐ糧としていきました。彼らがコロナ禍での活動を乗り切ってきた原動力とは、いったい何だったのでしょうか。(以下、本文敬称略)

コロナ禍だからこそ能動的な体験をしたかった

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−−「経済同友会版インターンシップ」への参加のきっかけは何でしたか。

富田:インターンシップは実際に企業に出向いて、社員の方とプロジェクトに取り組み、会社の雰囲気を知るというイメージを持っていたので、今回、オンラインでどこまでそれを体験できるのかという不安はかなりありました。でも、オンラインでのインターンシップを体験してみると、アプリ開発のプロジェクトの進め方や、業務に対する社員の方々の考え方に触れることができました。

大益:私は高校卒業後に4年ほど働いた経験があり、その後に大学に入学しました。とはいえ、自分が見てきた社会は氷山の一角ですし、今後再び社会に出る前に、広い視野で社会を見ておきたいという気持ちから、インターンシップに参加しました。

山本:1年生の時に学内掲示板でこのインターンシップを知り、2年生になったら参加しようと決めていました。もともと金融業界に興味があって経済学部に入学しましたが、今回、野村證券でのインターンシップを経験できるとあったので応募しました。春学期は授業がすべてオンラインになり、自分の部屋という閉塞的な環境で、受け身でしか学ぶことができない状態でした。そこで、インターンシップに参加することをきっかけに、コロナ禍だからこそできるオンラインでの能動的な学び、つながりを体験したいと思いました。

中嶋:私は大学4年間で自分がどれだけ成長できるかを意識して過ごしています。2年生のうちに留学を経験したかったのですが、コロナ禍で実現できなくなってしまったので、新たな挑戦の機会として、インターンシップに参加し、自分の持っている力を最大限に発揮しようと考えました。そして、実際に銀行でのインターンシップに参加し、社会課題を解決するビジネスプランの提案に取り組みましたが、2日目からは大益さんと同じグループで活動することになりました。

大益:私はイブニングコース(第2部)の学生なので、これまで中嶋さんと面識はなかったのですが、彼は本当に頼れる存在で、率先してリーダーシップをとってくれました。メンバーたちがオンラインでの議論やプロジェクトの進め方を悩んでいる時にも、率先して論理的に話を進め、メンバーをまとめていってくれたんです。

中嶋:大学の代表として参加している意識もあったので、頑張りました。大益さんは最初からとてもフレンドリーに接してくれて、やはり同じ大学から参加している人と同じグループで活動できるのは心強かったですよ。だから、早いうちにLINEを交換して、研修外の場でやり取りをしてコミュニケーションを深めていきました。

オンライン会議システムを使用して取り組んだグループワーク

−−実際にはどのように研修を進めたのですか?

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富田:私は情報連携学部で日頃からパソコンを使って、プレゼン資料を作ったり、プログラミングをしたりといったグループワークに取り組んでいます。オンラインでのインターンシップでもあまり抵抗なく、研修を受けることができました。基本的にはZoomを使って、チームごとにアプリ開発に取り組み、メンバー同士で意見交換をしながら進めました。AIチャットボットが完成したときには、達成感がありましたね。また、プレゼン資料を作るときには、Googleスライドを使って、メンバーと一緒にリアルタイムで作り上げていきました。日頃の学びが生かされていると実感しました。

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山本:私の研修先ではWebEXを使いました。大学でも使い慣れている会議システムなので、それほど抵抗なく使えました。研修は、毎朝9時にメインルームに集まり、日本経済新聞の読み合わせをすることから始まります。その後はチームごとのルームに分かれて活動し、各チームに1人メンターと呼ばれる社員の方がついてアドバイスしてくださるなど、手厚いフォローを受けられました。企業調査をして、投資銘柄を選択してプレゼンをする機会が二度ありましたが、メンターの方からのアドバイスに対して、オンラインでのコミュニケーションの難しさもあり、もし対面であれば、自分が対応した以上の力で応えられたのではないかと、多少のもどかしさも感じました。正直なところ、やはり、できるなら出社して、メンターの方やメンバーともっと交流を深めたかった、という悔しさもあります。

−−オンラインならではの良さや難しさはどのようなところでしたか。

山本:北海道から九州まで、全国各地から参加者がいて一緒に活動できたのは、オンライン化が進んだからこその利点ではないかと思いました。

富田:確かにそうですね。私のインターンシップ先にも、全国各地から参加者がいました。グループワークをしながら雑談をすると、その地域ならではの食べ物などの話もできて、楽しかったですね。逆に、難しさを感じたのは、画面越しのコミュニケーションなので、相手の感情が読みきれないということもあり、意見を引き出していくときには苦労もありました。

大益:確かに、相手の人となりや性格も分からないなか、画面越しで人間関係を築いていくことから始めることには苦労しました。でも、アイスブレークの時間を最初に設定していただけて、そのなかで雑談をしながらコミュニケーションを深めていきました。そうした企業側の配慮があったからこそ、短期間でも円滑に研修を進められたのだと思います。

中嶋:私はむしろ、コロナ禍でインターンシップを経験できて良かったです。通常であれば、業務が終わったら解散して帰宅するので、それ以上の交流の場が持ちづらいのですが、オンラインで活動しているので、みな自宅にいるため、業務時間後も、そのままメンバー同士でLINEなどを活用して、プレゼン準備を進めて本番に臨みました。オンラインだから、むしろコミュニケーションが深まったんです。

自分の考えを的確に伝える力の大切さを痛感

−−コロナ禍でのみなさんの頑張りを支えてきた原動力は何でしたか。

富田:やはり、「つながり」が大きかったと思います。非対面ながらもコミュニケーョンを取らなければならないということで、今までの学生生活での経験も生かしながら、メンバー同士で会話を重ねて、信頼感を得られるようになり、絆が深まりました。

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大益:私の原動力は「将来に対する期待」でした。コロナ禍で自宅にこもっていると、どんどん自信を無くしてしまうんです。でも、そうした中でインターンシップに参加し、1つの成果物をメンバーと作り上げて、発表するという貴重な経験ができ、自信がつきました。そして、意識の高い人たちと出会い、自分もこんなふうに頑張ろう、努力しなくてはという気持ちにもなり、それが自分の将来への期待として高まりました。

山本:私は「アウトプットへの意識」でした。現在、コロナ禍でより一層、コミュニケーションが重視されています。直接的な接触が望まれない状況ではあっても、自分が感じていることを他の人に伝える機会は減らしてはならないと感じています。だからこそ、自分はどう考えているのか、あなたはどうしたいのか、ということを相互に伝え合える場として、今回のインターンシップは非常に有効だったと思っています。

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中嶋:「成長意欲」を持つことが大切だと考えます。大学生は高校生までとは違い、自分が好きなことをできる4年間であり、充実していると思います。4年間でどこまで自分を成長させることができるか。できるだけ成長させていきたいし、できるだけいろいろなことに挑戦したい。そうした成長意欲が私を今回のインターンシップに導きました。

−−コロナ禍でのインターンシップを通じて、学びや就職、将来に対する意識の変化はありましたか?

富田:世の中がオフラインからオンラインへと変化している状況を、インターンシップを通じて肌で感じることができました。働くことへの意識が変化し、そうした変化していく社会への対応力が培われたと思います。

大益:人と直接会って話ができない状況で、今後は就職活動でもオンライン面談などが取り入れられていきますし、自分としては対面でなければ本来は伝わらないような人柄を、非対面の場でも表現していく力、そして、短い時間で自分の意見を論理的に言語化する力を磨いていく必要があると感じています。

山本:世界中の誰もが予想し得なかったこのような状況下において、今後ますます求められるのは、コミュニケーション力、感じたことを言葉にしていく力だと思います。今は、新しい生活様式にいかに対応していくかということであり、今後もこうした予期せぬことが起こったときには、変化が起きていくと思うので、そのつど、新しいものを受容し、対応し、使いこなしていく力が必要になっていくでしょうね。

中嶋:そうですよね。コロナ禍を経験してみて、予測不能な時代に対して、一人の人間としての自分の強さを持つことが、その後の行動につながっていくのだと、今回のインターンシップを通じて改めて気づかされました。今後も自分の将来に向けて、さらに成長意欲をもって、いろいろなことに挑戦していきたいと思います。

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富田 和希さん情報連携学部 情報連携学科 2年

  • 私立成田高等学校出身
  • 凸版印刷株式会社:AIチャットボットの開発、企画立案などの体験
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大益 和真さん第2部・イブニングコース(夜)経営学部 経営学科 2年

  • 私立浦和実業学園高等学校出身
  • 株式会社三井住友銀行:社会課題を解決する新たなビジネスプランの提案
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山本 亜美さん経済学部 国際経済学科 2年

  • 神奈川県立横浜平沼高等学校出身
  • 野村證券株式会社:グループでの企業調査と推奨する投資銘柄の提案
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中嶋 一翔さん経営学部 経営学科 2年

  • 私立朋優学院高等学校出身
  • 株式会社三井住友銀行:社会課題を解決する新たなビジネスプランの提案
  • 掲載内容は、取材当時のものです