生活も仕事も充足して継続できる社会の実現に向けた、職業キャリアの実証研究
重点研究課題:
(5)(6)(8)
研究代表者:
西野 理子 教授(社会学部社会学科)
研究期間:
2024年4月~2027年3月
職業生活と家族生活は、個人の能力発揮、組織の生産性向上、少子化問題などの面からどちらも重要であることが確認されている。しかし、現代の日本社会においては、仕事の優先度が高くなりがちであり、そのために家族生活が配慮されなかったり、昇進をあきらめたり、なかには離職するケースも少なくない。本研究を通じて、東洋大学の職員ならびに教員が働きやすい環境を、学術研究の手法と成果を活かして達成していくことは、大学としての個性化とブランド力を高めることにつながるだろう。
取材:2024年7月
現代社会は、SDGsにおいて「ダイバーシティ&インクルージョン」が目標とされている通り、多様な人々が共に生きていける社会の実現に向かっています。その中でさまざまな生活スタイルの人たちが、充足感を感じ、意欲をもって働き続けることができる環境の実現を目指しています。
本研究では、働く人一人ひとりが充足してキャリアを築いていくことについて、東洋大学においてどのような状況にあるのかを調査し、検証していきます。これは、ジェンダー平等や働きがいのある社会というSDGsの達成に貢献する研究であり、大学という教育の場で男女ともに生き生きと働いている姿が実現されていれば、これから社会に羽ばたく学生たちにとっても有用な役割モデルになり得ると考えます。
研究内容は、第一に東洋大学の教員と職員のキャリア形成に関する計量分析を行い、キャリアラインがどうなっているのか計量的に把握します。第二に、育児休業と介護休業に着目し、育児や介護の当事者だけでなく、同じ職場で働く人々にどのような影響があるのか、多様な背景をもつ人々が一緒に働くうえでの困難やニーズについてインタビュー調査します。第三に、ジェンダーバイアスに着目し、インタビュー調査を通して課題を明らかにしていきます。
教職員のキャリア形成、育児・介護休業をめぐる問題、ジェンダーバイアスのそれぞれについて、客観的なデータを集めて分析することで、依存的な他者、世話を必要とする他者をケアしながら働く人たちの職場環境を次のステージに進化させていきたいと考えています。東洋大学をフィールドに実施する本研究を通じて得られた成果は、ほかの組織やさまざまな場所で働く人々にとっても有益なものになると期待しています。
東洋大学社会学部社会学科教授、本研究プロジェクト代表者。
早稲田大学文学研究科社会学後期博士課程単位取得。文学修士。専門分野は、家族社会学、ライフコース論。2011年より現職。日本家族社会学会、日本社会学会、家族問題研究学会、比較家族史学会に所属し、日本の家族関係の動態に関する研究を行う。編書に『よくわかる家族社会学』(ミネルヴァ書房)、『夫婦の関係はどうかわっていくのか』(ミネルヴァ書房)など。