1.貧困をなくそう11.住み続けられるまちづくりを

レジリエントな社会に向けたSDGsの包摂的実現に関する研究

  • 重点研究課題:

    (5)

  • 研究主体:

    国際共生社会研究センター

  • 研究代表者:

    松丸 亮教授(国際学部国際地域学科)

  • 研究期間:

    2022年4月~2025年3月

レジリエントな社会の実現をめざした
国際貢献を

写真:松丸 亮教授

20年前から一貫して「持続可能な開発」に関する研究に取り組んできた東洋大学国際共生社会研究センター。多様な研究領域の教員がゆるやかにつながり、共同研究を進めるオープンな環境が特色だ。2022年度からは研究テーマに「SDGs」を明記するとともに、「レジリエント」を研究のキーワードを加え、新たな研究プロジェクトを始動した。

取材:2022年6月

発足以来、一貫して持続可能な開発に取り組む

国際共生社会研究センターは、英語名称であるCenter for Sustainable Development Studiesが示すように、20年前の設立時から一貫して「持続可能な開発」に関する研究をフィールドに根ざしたかたちで行ってきました。最近様々なところで話題となっているSDGsは2015年に国連がSDGsを発表したものですが、それよりもずっと以前から持続可能な開発に取り組んできたのです。

本研究プロジェクトは、2019年から2021年度まで行われていた東洋大学重点研究推進プログラム「開発途上国における生活環境改善による人間の安全保障の実現に関する研究-TOYO SDGs Global 2020-2030-2037-」を継承するものです。今回の研究プロジェクトでは、センターが持続可能な開発に関する研究を行っていることを改めて研究員全員が共有するため、研究プロジェクト名に「SDGs」を明示的に掲げるとともに、「レジリエント」というキーワードを加えることで、各研究員が新たな発想を持ち、一つの方向性をもったかたちで研究プロジェクトを始動させました。

「レジリエント」とは、「しなやかで強い」という意味ですが、昨今のコロナ禍や気候変動による自然災害などの災厄や、格差拡大といった様々な社会課題に対して屈することのない社会の実現という願いが込められています。また、「包摂的実現」とは、特定の地域や国、一部の人々だけが幸せになるのではなく、様々なアプローチによりレジリエントな社会を実現するという想いが込められています。それは、SDGsの基本概念である「誰一人取り残さない社会」という視点や、SDGsのゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」にも通じるものです。

写真:TOYO x SDGs インフォグラフィックス

異分野の研究者たちが集結し協業するオープンな研究環境

今回の研究プロジェクトでは、都市計画やまちづくり、インフラ・公共交通、環境・防災、公共政策、福祉、教育、村落開発、多文化共生、ジェンダーなど多様な分野を専門とする教員15人が参加しています。ほかにも、教員と連携して研究を行う客員研究員やリサーチアシスタントなどが参画をしています。

当センターはもともと、プラットフォームのような役割をしており、文理を問わず、様々な分野の研究者が集まる場となっています。研究領域の異なる研究者たちが議論をし、互いの得意を出し合い、また共通の問題意識のもとに協働して研究を行うということを柔軟に行ってきました。

研究室にこもっていると他の分野の研究者と話す機会がなかなかありませんが、当センターの自由でゆるやかな関係性の中で、ともにフィールドに足を運ぶことで思いもよらない気づきや新しい共同研究が生まれています。

写真:説明する松丸 亮教授

発展途上国支援を中心とした国際協力活動や産官学連携プロジェクトが進行中

現在進行中の具体的な研究であるミャンマー・インレー湖水質保全、フィジーにおける排水処理、サブサハラアフリカにおける村落給水事業などは、開発途上国の生活環境の改善や貧困の削減に関する研究で、前年度まで行っていた研究プロジェクトから継続して実施しているものです。

また、フィンランド・オーストラリア・ポルトガルの大学と実施している、親になるカップルが育児に参加していく関係を明らかにする研究「親になる過程におけるコペアレンティング認識の形成に焦点を当てた横断的国際比較研究」やWIPOGreen特許を利用した産学連携研究も継続して実施しています。

本研究プロジェクトでは、プラットフォーム機能をより強化するための複数の研究員が連携して研究を実施することを基本としています。「地域づくり」、「生活環境改善」、「ジェンダー・福祉」、「教育・職業」といった分野の研究を異なった専門分野を持つ研究員が連携することで包摂的な視点を持つ研究が行われることを期待しています。

さらに、これまで準備を進めてきた産官学連携プロジェクト、例えばJICA(独立行政法人国際協力機構)、WVJ(ワールドビジョンジャパン)と連携した実践研究や、青年海外協力隊として派遣されている大学院生らと遠隔教育・研究を実施することで、国際貢献と研究の融合をはかっていきたいと考えています。様々な分野、機関とのコラボレーションというかたちのオープンな研究環境を提供するとともに、海外からの留学生や若手研究者もメンバーに加え、後継者の育成にも貢献していきます。

ミャンマー・インレー湖周辺の住民を対象にしたワークショップの様子
ミャンマー・インレー湖周辺の住民を対象にしたワークショップの様子

日本における開発研究の中心的存在を目指したい

先の重点研究推進プロジェクトでは、2037年(東洋大学創立150周年)に日本の開発研究における中心的存在になることを目標として掲げていました。本研究プロジェクトでもこの目標は継続しています。

そして、本研究プロジェクト期間中の成果として目指しているのは、一つには、SDGsの達成に向けた研究を分野横断的に進めること。この分野における実践研究の発展に寄与することです。積極的に論文を発表していくことで、文系の国際学研究科に立脚するセンターでも国際競争力を示せることを証明したいと考えています。

そのため、研究プロジェクト期間中にScopus収録ジャーナルへの論文20編の掲載を目標にしています。また、日本語と英語の書籍を最低1冊は刊行したいと考えています。

もう一つは、本研究の活動自体が社会貢献であり、国際貢献であるということです。本研究において蓄積された知見を、他の地域や分野に展開し、実践性を高めていくことは、まぎれもない社会貢献であり、また日本および東洋大学のプレゼンスの向上にもつながるでしょう。

本研究プロジェクトでは、論文発表、国際学会等での研究報告も積極的に行っていくことはもちろんですが、年間3回のシリーズセミナー(CeSDeS Open Seminar onSDGs)や国際シンポジウム開催、定期的なニュースレターのメール配信などのアウトリーチ活動にも力を入れていく計画です。

時間をかけて、人の心や行動を変え、SDGsへの貢献を進めていく

開発途上国の生活改善や国際貢献に関する研究のモチベーションは、対象となる国のことを理解して、その上で何ができるかを探るところにあります。地元の人たちといっしょになって活動し、課題を見つけ、ともに解決していく。

SDGsの達成に向けた課題の中には、人間の行動様式を変えなければ解決できないものも多く、物理的なモノづくりと違って、人の心や行動を変えるには長い時間がかかります。1年、3年といった短期間で結果を出すのは難しいのです。このような地道な研究の価値を認められたことに感謝し、その期待に応えるためにも、メンバー一丸となってプロジェクトを進めていきたいと考えています。

写真:松丸 亮教授

松丸 亮

東洋大学国際学部教授、国際地域学科学科長
横浜国立大学工学部土木工学科卒業。パシフィックコンサルタンツインターナショナル、ソーワコンサルタント、アイ・アール・エムでコンサルタントとして、国内外の防災プロジェクトに参画。特に、2005年以降は、インドネシア、スリランカ、パキスタン等、多くの途上国政府に対する防災政策提言、政府職員能力強化ODAに従事。この間、横浜国立大学大学院にて修士・博士課程を修了。博士(工学)。2013年より東洋大学教授。専門は国内外の防災・復興、水問題、途上国開発支援。