東洋大学 TOYO COMPASS 2024 TOYO UNIVERSITY REPORT

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哲学教育を礎とし世界に通用する人材を育てる

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旅する哲学者 井上円了

旅する哲学者 井上円了

1887(明治20)年に哲学者井上円了が創立した「私立哲学館」から、その歴史が始まった東洋大学。急速な近代化と共に日本社会が大きく変わろうとしていたこの時代に、ものの見方や考え方をしっかりと身に着けて日本人としての拠り所を取り戻すためには、「哲学」が必要であると円了は考えました。哲学館では、いわゆる哲学者を養成するのではなく、哲学を通じて知力を磨き、社会で活躍できる人材を育成することを教育目標としました。また、幅広い人々が、哲学を中心とする諸学を学べるように、広く教育の門戸を開放。現在の東洋大学も井上円了の理念を受け継ぎ、幅広い学びの場を提供するとともに、地球社会の未来に貢献できる人材を育てています。

創立者井上円了

創立者井上円了とは?

1858 (安政5) 年、新潟県長岡市浦の慈光寺の跡取りとして誕生。10歳から私塾で漢学を、16歳から長岡の洋学校で洋学をび、20歳で京都・東本願寺の国内留学生に選ばれ上京しました。1881年 (明治14) 年、東京大学文学部哲学科に入学し、 「真理は哲学にある」 ことを確信。在学中は哲学を修めるだけでなく、世の中の“不思議”に対して科学的アプローチで謎の解明に挑み 「妖怪研究」 にも注力していました。29歳の若さで東洋大学の前身となる哲学館を創立して学校教育に邁進。また、全国巡回講演や3回もの世界一周の海外視察を実施し、多様な文化や教育について学びました。その経験からグローバルな視点で日本の現状を捉え直し、独自の教育方針を定めています。精神集中の場としての哲学堂公園の建設にも身を捧げ、1919 (大正8) 年に生涯を閉じるまで、社会教育にも力を尽くしました。

旅する哲学者

井上円了は、 「活書活学」 という言葉で、現実世界を活きたテキスト (活書) として、実体験から活きた学び (活学) をする大切さを説きました。そして、自らも 「活書活学」 を実践すべく、生涯3度にわたり世界一周の視察旅行を行いました。

旅を通して、円了は、世界各地に多様な自然と文化があることを知るとともに、欧米先進国の教育と宗教の実情について見聞を広めました。さらに、旅で得た知見を基に日本の現状をグローバルな視野から捉え直し、自らの教育事業の指針を定めています。

このような地球規模の 「活書活学」 によって、世界と日本がどこへ向かおうとするのかを探究し続けた創立者独自の哲学は、現代の東洋大学にも受け継がれています。 「グローバル人材の育成」 、 「SDGs達成に寄与する研究の推進」 など、東洋大学では今の時代・社会と向き合い、教育研究の推進と将来構想の策定に取り組むとともに、自己の哲学を磨き、物事の本質を見究められる人材の育成を行っています。

教育の門戸を広げる志

「余資なき者」(経済的余裕のない人)も、「優暇なき者」(時間的余裕のない人)も、哲学を中心とする諸学を短期間で修得できる。1887(明治20)年、井上円了は哲学館を創立するに当たり、このような趣旨を掲げました。そうしたところ、50名の入学定員に対して、希望者が殺到し、ついには200名ほど集まったところで入学謝絶となりました。

その翌年には、地方に住むなどの理由で通学できない人を対象に、『哲学館講義録』を頒布し、通信教育にも取りかかります。さらに、1890(明治23)年には、円了が自ら全国各地に出向いて講演を行う全国巡回講演も開始します。こうした取り組みは、広く民衆に教育機会を開放する試みとして、画期的なものでした。

現在、東洋大学では、教育の門戸を広げようとした創立者の志を受け継ぎ、6学部8学科に第2部・イブニングコースを設置するほか、社会貢献センターにおいて公開講座や講師派遣事業を行うなど、幅広い学びの場を提供しています。

旅する哲学者

哲学者にして妖怪博士

井上円了は、哲学者であると同時に妖怪研究の先駆者として知られています。円了が最初に妖怪研究に取りかかったのは、東京大学在学中のことで、いわゆる化け物だけでなく、俗信や精神現象、天変地異など、広く世の中で不思議とされている事象が研究の対象となっていました。こうしたものに対して、円了は科学的なアプローチでその解明に取り組みました。この極めてユニークな研究は、やがて妖怪学という独自の学問に体系化され、哲学館での講義や著書、講演などを通して、「妖怪博士」の異名とともに世間にも知られていきました。

妖怪学は、根拠のない思い込みや偏見に惑わされず、物事の本質を見極めることの大切さを説くものであり、日本を精神面から近代化しようとする試みでもありました。

哲学者にして妖怪博士
漫画『円了』

創立者・井上円了を漫画化
チャレンジ精神に満ちたその生涯を全世代に

井上円了哲学センターは、東洋大学創立者・井上円了の思想や生涯を作品化した漫画『円了』(第一話~第四話・2024年4月現在)を公式Webサイトにて公開中。哲学者、生涯教育の先駆者、妖怪博士、仏教者、世界旅行者など様々な顔をもつ井上円了の姿を、附属高校を含めた自校教育の教材のみならず、子供から大人までに伝えることを目的として制作しました。漫画は、『B(ベー)~ ブラームス20歳の旅路』等を描いた留守keyの舩渡正展氏(本学OB)、青山敬典氏が担当。「幕末から明治という激動の時代を生きた教育者円了を、ひとりの人間として描いてみたい」とコメントしています。