Academics & Global 東洋大学国際教育センター紀要
東洋大学国際教育センター紀要第二号 巻頭言
東洋大学国際教育センター長 高橋 一男
東洋大学国際教育センターは2014 年に「スーパーグローバル大学創成支援」事業(SGU)に採択され急速にかつ積極的に国際化を推進してきた。大学の創設者である井上円了先生は明治期の海外渡航が困難な時代に3度にわたる世界視察を行って東洋と西洋の人間・文化に直接触れて、その体験から日本の伝統を尊重し、かつそれを普遍的な真理に照らして哲学することを訴えたが、そのDNA は今日の大学の国際化にも生き続けている。2023 年度でSGU は一区切りをむかえるが、2024 年度以降の大学の国際化についてもそのDNA が受け継がれていくものと考える。
国際教育センターはコロナ禍においても国際教育交流を途絶えさせることなくそのミッションを推進するためにオンライン会議システムを活用した協定校との協働授業や学生が主体的に行う国際学生ミーティングを実施してきた。UMAP(University Mobility in Asia and the Pacific:アジア太平洋大学交流機構) 加盟大学と大学間協定を交換している他の地域の大学に広くよびかけて模擬国連も実施してきた。
SGU 採択と並行して留学生就職促進プログラム事業に採択されたのをきっかけに、留学生の日本国内での就職率をアップさせる目標を達成するためにビジネス日本語教育と日本文化教育(とりわけに日本企業文化論)の充実を図ってきた。夏季休暇、春季休暇期間中に「ビジネス日本語ポイント講座」をオンラインで開催したところ世界中から学生だけではなく日系企業に勤務する者、日本語学校で教鞭とっている教師、大学の日本語専攻担当教員などの受講者が集まり当該分野の学習、教育に関心が集まっていることをあらためて認識することになった。
その成果として文部科学省が推進する日本発のオンライン国際教育プラットフォーム「Japan Virtual Campus(JV-Campus)」に参画しビジネス日本語教育分野の幹事校を務めている。
国際教育センターはこうした国際教育交流、異文化理解教育、日本語教育等の専門家集団として学内外において不断の教育研究活動を行って各自の専門分野における研究活動に関して研鑽を積み重ねている。また、大学の国際化は国際教育センターだけのものではない。学部、学科、研究科の独自の国際化も同じことである。
本研究紀要はこうした研究者の日頃から取り組んでいる研究テーマに関する成果の発表の場として2022 年度に創刊された。第2 号には研究論文(査読つき)1 本、研究ノート1本、計2 本を掲載し、創刊号掲載論文等を含め、広く国の内外において国際教育交流、異文化理解、日本語教育等の分野において学術的に貢献するとともに今後求められる多文化共生グローバル人材の育成にも寄与することを願ってやまない。
2024年3月
東洋大学国際教育センター紀要
第二号 2024年3月発行
目次
巻頭言 | 高橋一男 |
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研究論文(Academic Papers) | 日本語学校の歴史的変遷とこれから ─「日本語教育機関認定法」制定をめぐって─ 二子石 優 |
研究ノート(Research Notes) | 大学での留学促進に向けた一考察 ―留学準備講座での大学生の留学に関わる価値観と行動特性に着目して― 水松 巳奈 |
東洋大学国際教育センター紀要
創刊号 2023年3月発行
ISSN 2758-6693
目次
巻頭言 | 高橋一男 |
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研究論文(Academic Papers) | International Student Experiences of Emergency Remote Teaching Robert C. Morel 客観的評価に基づいて検証した大学生のグローバル・コンピテンスの変容と特性から見えた課題と可能性 水松 巳奈 |
研究ノート(Research Notes) | Understanding Student Preferences for Written Feedback on L2 English Writing Assignments Simon Aldrich and Katsuichiro ‘Ken’ Ohashi 正課外の異文化間協働活動の実践と難しさ―参加学生のインタビュー分析を通して― 山内 美穂 |
報告(Reports) | 日本語教育において「社会」はどこに位置づけられてきたか―学会誌『日本語教育』掲載論考の調査報告― 牛窪 隆太 福村 真紀子 対面とオンラインのハイブリッドで実践する国際共修授業の課題-参加する学生間の意識と参加態度の違い- 髙橋 美能 |