機械工学科

暮らしを支えるものづくりの理論×実践。

生体機能デバイス研究室(中嶋和弘 准教授)

人工関節の長寿命化

関節の病気や事故などによって自身の関節が動かせなくなった時に、人工関節へ置き換えることで再び健康に動けるようになります。すでに世界中で臨床応用されている人工関節ですが、その寿命は十数年程度です。近年は平均寿命が長くなってきているため、より長い間使用できる人工関節が求められています。このようなニーズに応えるため、長寿命の人工関節の開発を目指し、基礎研究から応用研究までを行っています。

人工関節の寿命を決定する要因は、摩擦面材料の摩耗が主要因です。人工関節を長寿命化するためには、摩耗が少ない材料、摩耗が少なくなる動作条件などを検討する必要があります。医師ではなく、工学者が人工関節の研究を行う理由はここにあります。一般の機械とは違い、人工関節は体の中で使用するために人体に有害な材料は使うことが出来ません。機械で用いられている機能的な材料などは多くの場合、人体に有害なものになります。人体内で安全に使用できる限られた材料から長寿命化を目指しています。

生体関節は軟骨を介してしゅう動します。軟骨があるおかげで関節を滑らかに動かすことが出来ます。人工関節にも軟骨を導入することで滑らかに動かすことが出来ます。また、人工軟骨を導入することにより、潤滑モードを境界潤滑主体から流体潤滑へ移行させ、直接接触を防ぐことで摩耗を少なくすることも可能となります。本研究室では生体軟骨に近い機械的特性を持つハイドロゲルを用いた人工軟骨の開発と評価を行っています。

現在の主要な人工関節材料の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)よりもハイドロゲルは柔らかい(UHMWPEの弾性率は約600MPa、人工軟骨の弾性率は約10MPa)ため、摩耗が加速度的に進行する恐れがあります。このような摩耗を防ぐために、生体関節液に含まれる蛋白質をハイドロゲル表面に吸着させることで、ハイドロゲルの摩耗を防ぐ研究を行っています。

この研究室を希望する方へ

生体機能デバイス研究室では、機械工学を応用して体の失われた機能を補助するためのデバイスの研究・開発を行います。研究ではトライボロジー分野を主に扱い、生化学や解剖学などの知識も必要となります。機械工学だけでなく、学部の履修科目にはない内容も扱うので研究は大変ですが、その分やりがいは大きくなります。これからの超高齢化社会を豊かな社会とする意欲のある学生を求めています。

研究を行う上で必要な知識や関連研究についてゼミなどで学び、それぞれの研究に生かします。今、知識がないことに躊躇しないで下さい。知らないことが沢山あることは、これから沢山知識を得られるということでもあります。“よく遊び、よく学べ”の精神で取り組んで欲しいと思います。

学会参加を奨励します。ぜひ学会に参加して、発表だけでなく、他大学の学生と交流して欲しいと思います。きっと皆さんの人生で大きな経験になるでしょう。