機械工学科

暮らしを支えるものづくりの理論×実践。

マイクロ・ナノ構造形成研究室(物部秀二 准教授)

近接場光学顕微鏡用ファイバープローブの作製

超高分解能の近接場光学顕微鏡のファイバープローブは通常の光学顕微鏡における対物レンズのように機能を果たす心臓デバイスです。しかし、ナノ開口構造を有するファイバープローブの生産技術は原子間力顕微鏡のカンチレバーを製造する半導体技術に比べて、量産性において劣ります。また、応用展開に伴い顕在化してくるニーズは形状を見る原子間力顕微鏡に比べて、光波長を変化することが可能な近接場光学顕微鏡のそれは幅広く、生産において、多品種性も求められます。学位論文(1999年)において、ファイバープローブの問題をニーズとシーズの両面から総合的に分析し、具体的解決策とファイバープローブ技術を体系的に論じました。その後も、ファイバープローブの研究者として、サイズ依存無電解めっきの光プローブへの応用など、光プローブを量産する手法の模索とコストダウンを意識した姿勢をもって、この分野をリードしています。大学の研究室では、量産化、多品種化を目指した新しいプローブ技術の開発を目指しています。

近接場光学顕微鏡の実用化の歴史は1980年代からと比較的新しいのです。近接場光学顕微鏡は「光を情報媒体とする走査型プローブ顕微鏡」あるいは「回折限界を超える超高分解能光学顕微鏡」として1980年頃に登場し、80年代中頃から90年代初頭にかけて行われた萌芽的研究の結果システム化されました。それゆえ、近年になってから、ナノメーターサイズの生体試料の形状と構造の観察、単分子蛍光検出、半導体デバイスの分光研究、高密度光記録等への応用研究が積極的に展開されました。また、90年代半ば以降、近接場光学顕微鏡が商品化されたことは、90年代半ばごろから数年の間に近接場光学研究に携わる人口を急速に増加させましたが、残念ながら、供給されるプローブの品質のばらつきのために再現性のよい近接場像を得ることに苦労するユーザーが多かったのです。それゆえ、近接場光学プローブは潜在的ニーズの高い技術といえましょう。

この研究室を希望する方へ

従来技術を身につけることを指導者に請願する自主性・積極性を大事にしましょう。毒物・劇物薬品や高圧ガスのある実験室では、指導者は安全性を確認しながら技術の伝授を行わなければなりません。伝授される意思とそれを継続的に再現する能力のどちらかがないと疑われる学生には、安全管理上、実験を許可しません。

時間は作るものという感覚を持ちましょう。社会活動では「時間がなかった」ということは理由になりません。卒業研究において、運が良くて成功することも、結果として、時間が足りず目的を達成できないこともあるでしょう。時間配分の失敗による目的の未達は残念なものです。

美的センスを大事にしましょう。美しさの追求は人間のこだわりの一つであり、実験において、「こだわり」は重要です。実験センスの育成に美的センスが必然とはいえず、その関係性を証明する科学的根拠もありませんが、「美しい法則」という表現があるように、理工分野にも美意識が存在します。