「学び」とは、青少年期や学校だけのものではなく、英会話学校やスポーツクラブ、子どもの習い事など、さまざまな学びの場があります。「人生100年時代」と言われ、グローバル化する社会において、新しい生き方への転換を促す学びとその支援は不可欠です。豊かな人生を実現するための学びを考える新しい学問、それが「生涯学習」や「社会教育」です。しかし実際の調査を見てみると、学歴社会と言われる日本では、社会生活を営む成人の学習環境は不十分であることがわかります。英国ロンドン市内にあるタワー・ハムレッツ区は、エスニック・マイノリティが多く、貧富格差が拡大し、区民の学習活動が低調しているという問題を抱えていました。こうした地域特性から見えてくる生活課題を解決するため、「アイデア・ストア」という図書館、学習、情報をコア・サービスとする新しいコミュニティ教育施設が建設され始めています。魅力的な外観と利便性の高い立地に、多様な学習コースとカスタマー・サービスを意識したアクテビティが充実し、地域の学習拠点となっています。「アイデア・ストア」が地域の再生基盤となり、地域に根差した活動によって、近隣の人間関係の形成にも貢献しています。利用者もスタート前と比べて4倍に増加し、身近な学び合いにより、移民たちが抱える孤独が解消されて、健康増進にも寄与しています。英国の先進事例をもとに、これからの日本の生涯学習支援が目指していくべきことは、「学びの格差を是正する多様性と平等性の重視」や「学びを日常生活の一部にする創意工夫」、そして「地域の学び合いの再評価」であり、これらの三つの視点が重要となるでしょう。

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関 直規教授文学部 教育学科

  • 専門:社会教育学・地域文化論
  • 掲載内容は、取材当時のものです