南イタリアの「カミーニ」という小さな村では、2011年頃からアフリカや中東からの移民を積極的に受け入れ、多文化共生社会について相互理解する「連帯ツーリズム」を進めています。これは、訪れた地域に住む人々と交流をして相互理解を深める観光のことを指す、持続可能なツーリズムの1つの形です。「相互理解」とは、その地域の住民が抱えている環境問題について解決方法を一緒に考え、地域でのボランティア活動などを通して、お互いに困難を乗り越えていける社会を理解することを意味します。また、互いに異なる文化的背景を持つ人々が支え合うことで、偏見のない共生社会の大切さを理解すること、つまり、訪問客と地元住民が相互に理解し合うことであると言えます。カミーニ村では、移民の人たちが仕事を得て働き、地域の人と協力して地域活性化の活動をしています。イタリア人スタッフが運営する非営利団体では、海外から若者ボランティアを受け入れる連帯ツーリズムも始まっています。世界各国から来たボランティアの人たちは、移民住民の子供の世話や勉強を手伝い、地元住民と一緒に民芸品の制作や販売などをしています。連帯ツーリズムの注目すべき点は、訪問者の滞在期間が長いことで、住民とよりコミュニケーションが進み、相互理解が深まることです。そして、世界中から常時、その地域に人が訪れるため、リフォームした空き家を活用することができ、村に活気が戻ってきます。このように、連帯ツーリズムは地球市民の一員である私たちにとって、持続可能な観光の1つであると言えるでしょう。

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中挾 知延子教授国際観光学部 国際観光学科

  • 専門:多言語コミュニケーション、社会ネットワーク分析
  • 掲載内容は、取材当時のものです