「国家」とは、主権を持つ国民と独立した政府、国境で区切られた領土であることを要件とします。国際関係においては、政府間の条約で国境線や領土が定められています。日本は海に囲まれた島国であり、陸路で国境を越える経験を持たないため、私たちは国境をあまり意識することがないかもしれません。しかし、国境線を越えると外国語を話している人たちがいる、というように、私たちがイメージする国境とは違う国境の捉え方があります。例えば東南アジアの国境は、植民地としてヨーロッパ勢力が領土を分け合ったことで、もともと住んでいた人たちが引き継がざるを得なかった、つまり、同じ言葉を話し、同じ文化を持つ人たちが広がっているなかにも国境線があるのです。こうした「国家」や「国境」といった大きなテーマを、民衆の視点で、より身近な具体的な「物」から考えてみましょう。古着を例にとると、日本でリサイクル用品として集められ、シンガポールに送られ、マレーシアで加工されてインドネシアに流れていきます。日本からこの東南アジアの端の小さな島に至るまでの人のつながりが、古着を通して見えてきます。こうしたことも、ひとつのグローバル化だと言えるのではないでしょうか。グローバル化を、経済や政治のような大きな領域だけで理解するのではなく、人々や民衆、普通の生活をする人たちが紡ぎあげるものとして理解しましょう。そして、移民や難民のように、国境にかかわる問題が顕在化しつつある現在こそ、国家や国境のあり方についてはさまざまな関わり方があるという想像力を持って学んでほしいものです。

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長津 一史教授社会学部 社会文化システム学科

  • 専門:東南アジア地域研究、文化人類学
  • 掲載内容は、取材当時のものです