法学部のゼミでは、判例研究を中心に学びます。学生は身の回りの法律問題からテーマを決定し、重要な判例を探して分析したうえで、問題点を法的に考え、解決手段を導く手法を学ぶのです。そのなかでまず何よりも大切なのが、事実について詳細に理解することです。そのうえで、争点を明確にし、どのような法律を適用すれば解決できるのか、争点に対する裁判所の判断も併せて考察し、賛成か反対かの見解を、理由を含め、整理検討して形成し、私見を提示してゼミで議論します。
今回のテーマである「サブリース契約」は、不動産会社が不動産の貸主から賃貸物件を一括で借り上げて入居者に転貸するもので、貸主は入居者の有無に関係なく一定の家賃が保証されるうえ、入退時に関する手続きや家賃の集金業務などからも解放される制度です。貸主にとって損のない契約のようにも見えますが、定期的に賃料を見直す契約条項がつき、途中解約される可能性があるなど、トラブルになるケースが増えています。学生は実際の判例を用いて、ゼミで研究結果を発表しました。そして、「サブリースは本来重要な社会インフラであるため、契約締結時の重要事項説明を義務付けるなどの制度づくりが必要であり、個人の金融リテラシーの向上と不動産業者のモラルが大切だと思う」と意見を述べ、学生や先生と議論を交わしました。意見が対立することもありますが、時間をかけて話し合うと落とし所が見えてきます。法律の最大の目的は「敗者を作らない」ことで、立場の違う人同士が、ある程度納得のできる理由を定義するということが非常に重要です。ゼミを通して法的思考力(リーガルマインド)を養いましょう。

pf-taya.jpg

太矢 一彦教授法学部 企業法学科

  • 専門:民法
  • 掲載内容は、取材当時のものです