日本あるいは世界中で普及が進むサービスロボットや産業用ロボットは、同じロボットといっても異なる技術が使われています。サービスロボットの基本となる「自律移動ロボット」は、自分で考えて動くことができるもので、ロボットサッカーでその技術を垣間見ることができます。きちんと正確に動くロボットを作る技術や、自己位置を高速かつリアルタイムで正確に認識する技術をはじめ、無線LANによるロボット間通信とチームプレイ戦略を用いる技術、ハードウェアもソフトウェアも信頼性高く実現し、機能を維持するといった技術などです。これらを応用して機能や効率アップが期待できる分野に自動車の自動運転、サービスロボット、物流の配送センターの自動化設備、固有技術(モータ、センサ、バッテリー)の進歩などがあり、特に物流の分野では宅配便や配送センター、物流倉庫などで既に導入され始めています。一方、産業用ロボットはロボット単体では動かず、周辺機器と連動して初めて機能を発揮するロボットです。今回紹介する腕型ロボットも使用するソフトウェアや取り付ける周辺機器によって多種多様な動きが可能となるため、柔軟性が高く、工場を中心にさまざまな分野での活用が進んでいます。ロボットには効率化やコスト削減など多くのメリットがある一方で、自動運転の自動車が増えた場合のタクシー運転手の失業問題や、事故が起きた時の責任の所在など、雇用問題、事故、安全性などの点で多くの問題が隠れています。ロボット技術は進めば進んだ方がよいとは一概には言えず、導入する社会側でも、インフラや個人の意識も含めていろいろな整備をしていく必要があるのです。

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松元 明弘教授理工学部 機械工学科 ロボット工学研究室

  • 専門:ロボット工学、メカトロニクス、機構の解析と設計、自動化技術、ネットワーク対応型次世代生産システム
  • 掲載内容は、取材当時のものです